2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K20218
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮内 敦史 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (80804202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク解析 / コミュニティ検出 / 密グラフ抽出 / 二層ネットワーク / モデル化 / アルゴリズム設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和三年度においては,本研究課題の進展に寄与する以下の成果を得た.具体的には,二層ネットワーク上の密グラフ抽出法の設計である.二層ネットワークとは,一つの頂点集合上に二つの枝集合が定義された,通常のグラフを一般化した概念である.頂点集合上の2種類の関係や枝集合の不確実性を考慮する際に有用である.多層ネットワークの特殊ケースとしても知られ,多層ネットワークと比較して解析がしやすいという特徴をもつ.本研究では,一方のネットワークでは密な部分グラフを,他方のネットワークでは高い連結性をもつ部分グラフを誘導するような頂点部分集合を検出するための最適化モデルを導入した.グラフの密度としては最小次数を採用し,グラフの連結性としては枝連結度を採用した.提案モデルに対して,貪欲法に基づいた多項式時間の厳密解法を設計し,実ネットワークを用いてその性能を評価した.さらに,提案アルゴリズムによる解析が,ツイッターにおけるユーザ間のつながりや,ヒトの脳と自閉症スペクトラム症の関係に新たな示唆を与えることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,ネットワーク上のコミュニティ検出に対して,不確実性を考慮した最適化モデルの導入とそれに対するアルゴリズムの設計を行うことで,既存研究では実現し得なかった頑健なコミュニティ検出法を開発することである.不確実性として,ネットワーク・データがもつ不確実性とコミュニティ検出の利用者がもつ不確実性の二つを考慮する.
令和三年度の成果では,ネットワーク・データがもつ不確実性を考慮した密グラフ抽出法を設計した.密グラフ抽出では,部分グラフの内部の枝数のみを考慮し,外部とのつながりは考慮しない.したがって,密グラフ抽出はコミュニティ検出の要件を必ずしも満たしてはいない.しかしながら,最初からコミュニティ検出の要件を満たすことは難しいため,足がかりとして密グラフ抽出のアルゴリズムを設計するのは自然である.実際,研究計画にもそのように記述している.これまでに,二層ネットワークや多層ネットワークに対する密グラフ抽出のアルゴリズムを設計することに成功しており,不確実性を考慮した密グラフ抽出法の進展に貢献している.
以上より,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
コミュニティ検出よりも要件の少ない密グラフ抽出に対して,ネットワーク・データがもつ不確実性や利用者がもつ不確実性を考慮した,頑健なアルゴリズムの設計を行ってきた.今後の研究として,これらをコミュニティ検出に拡張することが挙げられる.また,これらの不確実性への対処方法は複数考えられるため,他の方法についても引き続き考察していく.
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Causes of Carryover |
令和三年度においては,新型コロナウイルス感染症の流行により,情報系のほぼ全ての国際会議がオンラインで開催された.本研究課題に関連する成果が採択された国際会議CIKM 2021もオンラインで開催された.また,本研究課題の遂行に資する海外研究機関への訪問も実現できなかった.以上より,旅費の次年度使用額が生じた.また,令和三年度においては,当初,高性能なコンピュータを用いた計算機実験を行うことを予定していた.しかし実際には,現在所有しているコンピュータで済ませることができたため,物品費の次年度使用額が生じた.令和4年度において,当初の目的通りに使用する予定である.
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Research Products
(7 results)