2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K20220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 孟留 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (50808475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 振動子 / 状態空間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
乳児の脳血流量を測定したfNIRSデータに潜む振動現象について解析を行った。このデータは各チャネルで酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの2変量時系列になっている点に特徴がある。赤池情報量規準を用いた状態空間モデルの選択によって、これら2変量時系列が共通の振動子を起源とすることが確認できた。また、脈波に対応する周波数帯に、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンに逆位相で重ね合わさる振動子と、酸素化ヘモグロビンのみに重ね合わさる振動子の2種類の振動子が見出された。さらに、より低周波数の帯域(脳活動を反映すると考えられる)にも振動子が見つかり、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの間の位相差が先行研究と同じ傾向を示した。 遺伝子発現量の時系列データに潜む振動現象について解析を行った。トレンドを除去した上で振動子分解の手法を適用したところ、複数種類の光刺激のそれぞれに同期した振動子に適切に分解されることがわかった。また、体内時計データから概日リズムに対応する振動子が抽出され、その位相が時差ボケと対応することが確認できた。 多くの振動現象は常微分方程式によって記述される。たとえば、神経電位の振動はFitzHugh--Nagumo方程式でモデル化される。このように常微分方程式でモデル化される現象において、観測データをもとにモデルのパラメータを推定する問題を考える。 ルンゲクッタ法などで得られる数値解を観測データに当てはめる方法が標準的であるが、この方法では数値解に含まれる離散化誤差によって推定精度が悪化しうる。 そこで、データに基づいて離散化誤差の大きさを見積もることでパラメータの推定精度を改善する手法を開発した。 数値実験によって、提案手法が離散化誤差を適切に定量化して推定精度を改善することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
状態空間モデルを用いた振動子分解の手法を多くの実データに適用し、興味深い結果が得られた。また、常微分方程式のパラメータ推定手法を開発し、 FitzHugh--Nagumo方程式などのモデルに対する有効性を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
振動子分解による実データの解析を引き続き進めていく。さらに、振動子が時変分散をもつモデルに拡張することで、脳波や地震波に現れる非定常な振動現象の解析を可能とすることを目指す。また、常微分方程式のパラメータ推定において、目的関数の勾配計算に関する技術的な課題を解決する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響で参加予定だった国際会議が中止になったため。
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Research Products
(17 results)