2019 Fiscal Year Research-status Report
動的型付けと静的型付けを融合した漸進的型付けのメタ理論
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19K20247
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
関山 太朗 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 助教 (80828476)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プログラミング言語 / 型システム / 漸進的型付け / 多相性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では静的型検査と動的型検査を融合した漸進的型システムのメタ理論について研究を進める。漸進的型システムで取り扱うことが難しいことが知られているプログラミング機能の一つにパラメトリック多相性があり、当該年度では特に多相性と漸進的型付けに関する研究を進め、以下の成果を得た。 (1)多相性の亜種である列多相性を漸進的型システムに取り入れる方法について研究を行った。列多相性はレコード型やバリアント型といったデータ型のうち一部だけを抽象化することのできる技法であり、列多相性を取り入れることにより漸進的型システムでデータ型がよりモジュラーに扱えたり、あるいはプログラム部品の静的・動的な仕様をより細かに表現できるようになることが期待される。漸進的型システムに列多相性を導入しても、型健全性などの基本的な性質が成り立つことを確認した。この成果は漸進的型システムに関するワークショップである WGT で発表済みである。 (2)多相性はプログラムが使用する計算効果を解析するエフェクトシステムにおいても、一部の計算効果を抽象化する上で重要な概念である。今後はエフェクトシステムと漸進的型付けの関係性についても研究を進めることを計画しており、当該年度ではその準備段階として計算効果を扱う枠組みの一つであるエフェクトハンドラと多相性についての研究を行い、エフェクトハンドラのための新しい多相型システムを構築することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漸進的型システムの、特に動的検査部分と相性の良くないことが知られている多相性や、その亜種である列多相性を、漸進的型システムにうまく取り入れる方法論についての研究が順調に進んでいる。また漸進的エフェクトシステムを構築する計画の過程で、エフェクトハンドラ自体の型システムの改良にも成功した。これらの成果は学術雑誌に投稿済みであり、そのフィードバックを受けて更に研究が進展することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き列多相性についての研究を進める。現在の列多相性の導入方法の問題の一つは漸進的型付けにおける動的検査のコストが非常に大きくなってしまう点であり、今後はこの問題を解消する予定である。 またエフェクトハンドラの研究を通して計算効果一般を定義する手法についても新たな着眼点を得たため、この点についても研究を進める。 さらには、エフェクトハンドラを取り入れた漸進的エフェクトシステムの構築にも取り掛かることを計画している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは新型コロナウイルスの影響により年度末の学会の現地開催がキャンセルされたため。 次年度では「新しい生活様式」に沿った研究活動を送るための物品の購入に充てる。
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