2023 Fiscal Year Annual Research Report
耐量子計算機暗号の多項式数理における安全性評価手法の確立
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19K20270
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
伯田 恵輔 名城大学, 理工学部, 准教授 (90587099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフィン代数幾何学 / 多変数多項式暗号 / 耐量子計算機暗号 / 有限体 / 置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
耐量子計算機暗号の有力候補のひとつである多変数多項式暗号では、その構成要素として多項式同型写像を用いる。より正確には、公開鍵暗号やデジタル署名の仕組みを実現するために、効率的に逆写像を計算できるアフィン自己同型や基本自己同型を繰り返し用いる。そのため、これらの多項式同型写像の数学的性質を解明することは多変数多項式暗号の安全性評価を確立するための重要な課題であり、特に、汎用的な鍵復元攻撃に対する安全性評価を確立するための必須の研究である。本研究課題では、研究代表者が提案したTame分解アルゴリズムとよばれる多変数多項式暗号に対する汎用的な鍵復元攻撃手法において、メモリ使用量が膨大になるという欠点を解消するための数学理論を構築する。 この数学理論の構築のために、2019年度は標数2の有限体に対し、Derksenの定理が成立しないことを証明した。2020年度は標数2の有限体に対し、Jacobian determinantが単元となる多項式同型写像で構成される群の最小な正規部分群の構造を研究し、上記の最小な正規部分群がtranslation groupによって生成されるか否かを明らかにした。2021年度は2019~2020年度に得られた研究成果をもとに、ある種のlinearized polynomial automorphismを用いて共通鍵準同型暗号が構成できることを明らかにした。2022年度は標数2の素体に対し、弱Derksenの定理の著しく簡易化された別証明を完成させた。2023年度は標数2の有限体上の多項式同型群から誘導される置換群と標数2の有限体上の順部分群から誘導される置換群の間に存在する部分群を発見した。本研究成果は、この研究分野において長年の未解決問題であるMaubach Conjectureにアプローチする際に有効と考えられる。
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