2019 Fiscal Year Research-status Report
連続緩和型アルゴリズムによる超並列高速グラフ分割の研究
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19K20280
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二村 保徳 筑波大学, システム情報系, 助教 (30736210)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフ分割 / 固有値解析 / 並列計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、大規模グラフのグラフ分割問題を解くための高速な並列アルゴリズムを開発する。グラフ分割問題は科学技術計算における偏微分方程式求解や、ソーシャルネットワーク解析、並列計算の負荷バランス最適化等に広く応用されている。本研究では離散最適化問題であるグラフ分割問題を連続緩和した問題の大域的最適化に基づく連続緩和型アルゴリズムを対象とする。 本研究では、グラフに関係する行列の固有値計算に基づくSpectral Partitioningアルゴリズム(以下SP)の開発を進めている。当該年度では特に従来から広く用いられているグラフ分割ソフトウェアMETISで採用されているグラフの粗視化に基づくマルチレベル型アプローチをSPに適用し、性能評価を行った。複数の標準的なテスト問題に対して、METISと同等レベルの質のグラフ分割が得られることを確認した。さらに応用として、マルチレベル型SPを疎な連立一次方程式に対する計算量・メモリ量削減のための前処理であるFill reducing orderingに適用し、METISと同等の質の結果が得られることを確認した。 また、本研究で開発した固有値計算技術の応用として、グラフ上で密に結合している小規模な部分グラフを検出する手法の拡張を行った。本手法の応用によって、実世界で現れるさまざまなネットワークの異常検知手法の高度化への展開が期待される。 本研究課題における今後の展開として、大規模グラフに対するSPの実装のさらなる高速化や、並列化スキームの高度化、さらに分散並列計算への展開が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、特に従来から広く用いられているグラフ分割ソフトウェアMETISに採用されているグラフの粗視化に基づくマルチレベル型アプローチをSpectral Partitioningアルゴリズム(以下SP)に取り入れ、実装と性能評価を進めた。 マルチレベル型アプローチで重要な役割を果たす頂点マッチングによるグラフ粗視化と、Cut関数の局所的改善手法であるFiduccia and Mattheyses (FM) refinementについて調査・実装を行った。 マルチレベル型アプローチではグラフ粗視化のために頂点の重みが均一でなくなるため、SPで従来採用されている通常のRatio Cut関数でなく頂点重み付きのRatio Cut関数を用いることが望ましいことに着目した。この頂点重み付きのRatio Cut関数を連続緩和することでグラフ分割問題を新たな一般化固有値問題に帰着し、粗視化グラフ階層の最下層で本一般化固有値問題を解く形式の手法を実装した。これにより、通常のRatio Cutを利用する場合に比べ、元のグラフのCut関数の値が改善するケースが複数のテスト問題で見られた。 マルチレベル型SPをVertex Separator最小化向けのFM refinementと組み合わせ、再帰適用することで疎行列対称線形方程式に対するNested Dissectionを実装し、METISで行った場合と同等のフィルイン削減効果が得られることを実応用から現れる複数のテスト問題で確認した。 さらに、本研究で開発を進めている固有値計算技術の応用として、グラフ上で密に結合している小規模な部分グラフを検出する手法の拡張を行った。代表者がこれまで高度化に取り組んできた周回積分型固有値解法を利用することで内部固有値に対応する固有ベクトルにおいても部分グラフを検出することができることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらにSpectral Partitioningアルゴリズムの固有値計算部分の高度化・高速化を目指す。特に実応用から現れるグラフ特有の性質を利用した、質の高い(Fiedlerベクトルをよく近似できる)低次元部分空間の効率的な生成手法について研究を進める。この低次元部分空間に対する射影法を用いることで、Fiedlerベクトル計算全体の高速化を図る。また、代数的マルチグリッド法を応用した固有値計算の収束性向上手法についての研究も進めていく。さらに疎行列ベクトル積計算をはじめとする各計算カーネルに対する実装の高度化を進め、メニーコアCPUやGPUでの高速なグラフ分割の実現に展開していく。 またさらに次のステップとしては分散並列計算への展開がある。Spectral Partitioningアルゴリズムでは特に疎行列ベクトル積が計算の主要部となるが、効率的な分散並列疎行列ベクトル積のためには負荷バランス最適化にグラフ分割が必要となる。本研究はグラフ分割が目的であることから、適切なグラフ分割を所与とできないため、共有メモリ並列の場合に対して質的に異なる難しさをもつ。高性能な分散並列化を実現するため、実行中に計算カーネルのパラメータ最適化するオンライン自動チューニング技術の開発を進める。
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Research Products
(3 results)