2019 Fiscal Year Research-status Report
悪条件連立一次方程式における前処理行列による条件数の低減に関する研究
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19K20281
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
南畑 淳史 中央大学, 理工学部, 助教 (70754787)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精度保証付き数値計算 / 悪条件 / 連立一次方程式 / 最小二乗法 / 疎行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019度は疎な連立一次方程式の精度保証付き数値計算を開発した。この研究は、疎な悪条件行列向けの前処理行列の開発および悪条件で疎な連立一次方程式の精度保証付き数値計算の開発の前段階の研究である。疎な連立一次方程式の精度保証付き数値計算法の開発は精度保証付き数値計算の分野において重要な研究課題の1つであり、正定値対称行列などの構造を持つ行列を中心に研究されてきた。そこで、対象とする行列をより一般的な疎な非対称行列とし、LU分解を用いた精度保証付き数値計算を基礎として、誤差評価式の中でfill-inが多く発生する箇所を回避するように誤差評価式を構築した。これによりfill-inは発生するが、多くの場合に誤差評価式中に密行列が現れること回避することができ、高速化、省メモリ化を達成した。また、この結果をMAT TRIAD 2019にて発表した。2020年度はこの結果を前処理行列に適用し、悪条件かつ疎な連立一次方程式向けの前処理行列の開発を試みる。
また、疎な連立一次方程式の精度保証付き数値計算法を応用して、疎な最小二乗問題の精度保証付き数値計算法の提案も行い、JSST 2019にて発表した。この提案手法は密行列にも適用可能である。最小二乗問題は誤差評価式の中に正規行列が現れる。正規行列は条件数が元の行列の2乗となるために悪条件になりやすい。今後、提案手法が従来法と比べて、悪条件の場合にどのような利点があるかを検証する。
更に、連立一次方程式の精度保証付き数値計算を応用先として、この他にUnderdetermined linear systemやnull spaceの精度保証付き数値計算法が挙げられる。来年度以降はこれらの問題が疎行列の場合についても研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画よりも理論的な解析が遅れているが、その前段階の応用研究で予想以上の進展があった。特に、疎行列に関連する研究に進展があったために、当初の計画よりも研究対象の幅が広がった。そのため、計画通りではないが、研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は悪条件かつ疎な連立一次方程式向けの前処理行列の開発を進める。また、今年度に開発した手法の応用研究を行い、応用先に関連する悪条件の問題に対する手法の開発も進める。
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Causes of Carryover |
2019年度末に開催される学会がコロナのために中止となり、旅費が多めに余っている。 繰り越した費用は研究発表のための旅費に使用する予定ではある。しかし、2020年度はコロナの状況次第では旅費が必要ない可能性もある。使用が難しい場合は再度、繰り越しを行い、2021年度にPCを購入する費用とする。
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