2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K20283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 拓也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (40782941)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 粒子法 / 数値流体力学 / 表面張力 / 自由表面 / 気液界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は流れシミュレーションにおける粒子法の計算精度を改善することを目的としたものである。これまで粒子法は界面形状の計算精度に課題があり、表面張力を主体とするような流れを精度良く解析することができなかった。そこで本研究では変形する界面に追従する移動サーフェスメッシュを新たに考案し、これまで困難であった表面張力を伴う流れの高精度解析の実現に取り組む。現在までに以下の研究成果を得た。 (1)「非圧縮流れの計算アルゴリズム」:時間進行法には部分段階法、空間離散化スキームにはLSMPSスキームを適用した。また、コロケート型変数配置に起因する圧力速度非干渉化を抑制し安定に解析を実施するため、発散スキームの修正法を提案した。基礎検証として円形パッチテストや矩形パッチテストを実施し、妥当性を示した。 (2)「表面張力の計算アルゴリズム」:従来のfront-tracking法において広く用いられている表面張力の式を適用した。移動サーフェスメッシュの各節点上でメッシュ形状から表面張力を直接評価することができる。検証として表面張力を駆動力とする液滴の振動を計算し、振動周期や内部圧力が理論解と一致することを確認した。 (3)「界面の境界条件の取り扱い」:気液界面では境界条件として応力の釣り合いが課される。そこで応力の釣り合い式と圧力勾配による速度修正式に基づき、界面上での圧力に関する式を新たに定式化した。従来の圧力ディリクレ境界条件を用いる方法と比較して、界面付近での数値安定性が改善されることを示した。 (4)「トポロジー変化の取り扱い」:液滴の生成等の現象を計算するため、移動サーフェスメッシュの分裂を考慮するアルゴリズムを実装した。検証として蛇口からの液垂れ問題を解析し、文献値との一致より妥当性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、実施項目を(1)粒子法を用いた流れの計算アルゴリズム、(2)移動サーフェスメッシュを用いた表面張力の計算アルゴリズム、(3)界面の境界条件の取り扱い、(4)トポロジー変化の取り扱いの開発、(5)実問題への適用に分けている。当初の計画では、初年度は計算手法の根幹部分となる(1)~(3)の項目に重点をおき研究に取り組む予定であった。 実際には、(1)~(3)のすべての項目を完了するだけでなく、(4)「トポロジー変化の取り扱いの開発」も完了している。更に、移動サーフェスメッシュを用いることによる計算精度の向上は期待以上に大きく、多くの検証問題を通して高い計算精度が確認されている。また移動サーフェスメッシュの導入に伴う計算コストの上昇は軽微であり計算効率も良いことがわかっている。 これまでに得られた研究成果は、国際会議や国内講演会で発表を行っている。更に、これらの成果をとりまとめた論文を執筆し、国内および国際ジャーナルにて発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実施項目のうち、(5)「実問題への適用」を進めていく。具体的には、インクジェットの解析を予定している。インクジェット問題では液柱の破断による液滴の生成が起こる。そのため、開発手法を軸対称座標系に拡張することが必要である。軸対称座標系では、支配方程式に現れる発散やラプラシアンなどの作用素を適切に変換するだけでなく、粒子再配置アルゴリズムについても新たに開発する必要がある。軸対称座標系における運動方程式は既に導出しており、粒子再配置アルゴリズムについても独自の手法を開発し見込みのある結果を得ている。今後は数値検証を重ねて、インクジェットの数値解析を実現することを目指す。
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Causes of Carryover |
当初、開発アルゴリズムの検証計算のために負荷の高い計算処理が必要であると見込んでいたが、想定よりも低い負荷の計算で妥当性を示すことに成功した。そのため、当初予定していた計算機の購入を先送りにしたことが次年度使用額が生じた理由である。翌年度は、計算アルゴリズムの開発、プログラム作成、応用問題の数値シミュレーション等を実施する予定である。そのため、数式処理ソフトウェア、C++コンパイラソフトウェア、計算機、データ記録媒体等の周辺機器を購入する。また、本研究を進める上で重要な知見を得るための調査、および本研究によって得られた成果を発表するために国際会議と国内講演会に参加する。さらに研究成果をとりまとめて国際ジャーナルへ英文論文として投稿するための費用にあてる。
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Research Products
(9 results)