2019 Fiscal Year Research-status Report
隠れ難聴における聴覚末梢メカニズムの解明と診断システムの開発
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19K20294
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
木谷 俊介 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70635367)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 選択的聴取 / 隠れ難聴 / 単語了解度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、聴力検査では異常が認められないが、様々な音がある中で音声が聴き取れない「隠れ難聴」を対象としている。隠れ難聴における内耳メカニズムを明らかにし、隠れ難聴の診断システムに展開することが本研究の目的である。代表者のこれまでの研究から様々な音から目的の音を聴き取る(選択的聴取)際に、内耳の特性が変化している可能性が示唆されている。本研究では、まずは隠れ難聴の程度を測るための試験が必要である。そこで、様々な音から音声がどの程度聴こえているかを測定できる実験システムを作成した。このシステムは雑音中に提示される音声の発する単語が何であったかを実験参加者が回答するものである。単語を正しく聴き取れたかどうかの正答率(単語了解度)を隠れ難聴の程度とすることとし、実験参加者に対して雑音中の単語了解度の測定を行った。 次に、内耳の特性として、内耳から音が発せられる現象である耳音響放射を計測した。耳音響放射は周波数の近い2音を同時に提示することで生じる歪成分によって発せられる歪成分耳音響放射を計測した。続いて、雑音中の単語了解度と歪成分耳音響放射との相関を調べた。その結果、両者に有意な相関は見られなかった。 最後に、内耳レベルの単純な周波数刺激で選択的聴取が誘導できるかどうか、つまりを明らかにすることを検討した。確率的に分布した正弦波音の連続提示後に特定の周波数に耳が向いているかどうかを計測する聴取実験を行った。その結果、周波数依存性があるもののある程度は選択的聴取が誘導できる可能性を示した。この結果は、国際会議1件、国内学会1件にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施計画は、1. 背景雑音下での音声聞き取り診断システムの開発と2. 耳音響放射と隠れ難聴の程度の相関を求めることの2点であった。 1について、単語発話や環境音の収録を行い、それらを統合することで、雑踏中の単語了解度を測定できるシステムを構築した。ここでは、幅広い年齢を対象に本システムを使えるように、全年代で耳なじみのある単語を用いた。正常な聴力を有し、隠れ難聴の症状を感じていない実験参加者に対して実験を行い、雑踏と単語の音圧のバランス調整を行った。 2について、まず耳音響放射の計測を行った。耳音響放射としてクリック音誘発耳音響放射を計測する予定であったが、耳音響放射を計測しやすく、乳児の聴覚スクリーニングも使用されている歪成分耳音響放射を計測した。次に、歪成分耳音響放射の振幅値と1で作成したシステムの結果(単語了解度)の値の祖王冠を求めた。その結果、二つに有意な相関は見られなかった。これは、正常な聴力を有する実験参加者を対象に実験を行ったため、単語了解度が高かく、データの分散が小さかったことが原因であると考えられる。 初年度の研究によって、雑音中の単語了解度を測るシステムが構築できたことは成果であった。2年目は単語了解度のバラつきを考慮できるように、選択的聴取が難しいことが知られている幼児や高齢者を実験参加者として実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の実施計画は、A. 隠れ難聴の程度と聴知覚機能の相関を求めること、B. 聴知覚能力診断システムの開発を行うことである。 Aの隠れ難聴の程度については、初年度の結果を踏まえて幼児や高齢者を対象に実験を行うことで、単語了解度の値にバラつきが見られると予想される。聴知覚機能については、計画通りにギャップ検出、変調音検出、時間微細構造弁別の三つの特性を計測する。これら三つの特性と隠れ難聴の程度(単語了解度)の関係について検討することで、耳音響放射以外の聴覚特性と隠れ難聴の関係について明らかにする。 Bの聴知覚能力診断システムの開発については、Aの結果を踏まえて、隠れ難聴の診断に適応できる聴知覚特性と適応できない特性とを切り分けることで、システムに組み入れる特性を選別する。また、診断システムとして使用できるように、診断に適した特性計測のための刺激パラメータの値を決定する。
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Causes of Carryover |
2020年4月に開催される予定であった(COVID-19の影響で開催は2020年12月に延期された)査読付き国際会議 Forum Acousticum に投稿した論文が2019年度内に採択された。年度を跨ぐ時期での開催のため、本会議への旅費として次年度に繰り越し、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)