2020 Fiscal Year Research-status Report
隠れ難聴における聴覚末梢メカニズムの解明と診断システムの開発
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19K20294
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
木谷 俊介 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70635367)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 隠れ難聴 / 選択的聴取 / 耳音響放射 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴力検査では問題がないが、雑踏の中での音声の聴き取り(選択的聴取)が困難になる隠れ難聴に悩む人が増えている。本研究の目的は、隠れ難聴における聴覚末梢の関与について明らかにし、隠れ難聴を診断するシステムの開発である。 今年度は、A. 隠れ難聴の程度と聴知覚機能の相関を求めること、B. 聴知覚能力診断システムの開発を行うことを予定していた。Aについては、隠れ難聴の程度と、ギャップ検出、変調音検出、時間微細構造弁別の三つとの相関について検討を進めることであった。隠れ難聴の程度は、昨年度までに完了した雑踏中の単語了解度を測定できるシステムを使用する予定であった。しかし、今年度はコロナ禍によってヒトを対象とした聴取実験を進めることができず、上記三つの特徴の予備的検討を進めるにとどまった。Bについては、上記Aの結果を基にシステム化を進める計画であったため、進捗はでていない。 一方で、Aで行う三つの課題以外に選択的聴取を困難にしている音響特徴として適したものがないか検証するために、スペクトルと時間の変調成分に着目した音響分析を行った。今年度は単音でのスペクトルと時間の変調成分の分析手法が確立できた。この結果は、音のスペクトルや時間による変化が、選択的聴取を行う際にどのような手がかりとなっているのかを示すものである。そのため、隠れ難聴はこの手がかりを捉えられなくなっている可能性があるため、当初予定していなかった、新たな評価指標として使える可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、コロナ禍の影響によって、ヒトを対象とした知覚実験を進めることができなかった。特に年度当初は、新型コロナウイルスの対応方法が明確でなかったため、全ての実験を取りやめざるを得なかった。しかし、現在は三密を回避することや、実験室入室の際の手指消毒など新型コロナウイルスへの対応方法が見えてきた。来年度は、感染対策を行い、ヒトを対象とした知覚実験を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、遅れている「隠れ難聴の程度と聴知覚機能の相関を求めること」を感染対策を実施した上で行う。その上で、計画どおり聴知覚機能診断システムとしてまとめる。また、新たに得られたスペクトルと時間の変調成分に着目した音響分析の知見を活かし、当初の予定であった、初年度実施したOAEの測定、上記の聴知覚機能診断システムとを統合する。システムの統合をとおして、どの機能が最も隠れ難聴に関与しているのかを突き詰める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって、実験参加者に支払う謝金予算や発表する参加学会がオンライン開催となったため、出張旅費予算に次年度使用額が生じた。 旅費は次年度もコロナ禍によって使用できない可能性が高いため、代替の対外発表費用として、論文投稿料等に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)