2019 Fiscal Year Research-status Report
結合振動子系における独立ノイズ誘起のカオス同期現象の研究
Project/Area Number |
19K20360
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
奥村 圭司 一橋大学, 経済研究所, 助教 (60710530)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リズム / カオス / 同期現象 / ノイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
リズムが自然にそろう現象は同期現象とよばれ,生物・非生物を問わず,さまざまな時空間スケールで観測される普遍的なものである。電子回路やニューロンがカオス的なリズムでそろうことも報告され,カオス同期とよばれている。また,多くの同期現象は,現実にはさまざまなノイズの影響を受けているが,直観とは逆に,ノイズが同期現象を誘発する場合があることも知られている。理論的には,同期現象は,リズムの数理モデルの一つである振動子系を用いてよく研究されてきた。非結合振動子系では共通ノイズによりカオス同期が誘起されることがわかっている。しかし,結合振動子系では,ノイズがカオス同期の度合いを「促進」することはあっても,純粋にノイズが直接の要因となってカオス同期を引き起こす「ノイズ誘起」カオス同期の報告はなかった。 本研究は,結合振動子系でのノイズ誘起カオス同期の存在を理論的に解明するものである。2019年度は,平均場結合系に独立なノイズが作用する可解な確率モデルを提案し,理論的解析および数値計算による研究を行った。結果,結合振動子系において,確かに独立なノイズがカオス同期を引き起こす場合があることを明らかにした。この成果は論文としてまとめ,学術雑誌へ投稿済みである。また,同期状態の定義を再考する取り組みとして,Ott-Antonsen仮説を拡張する研究も行い,より広い力学系を記述する理論を考えた。この成果は既に学術論文として出版済みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,結合振動子系でのノイズ誘起カオス同期を記述する可解な確率モデルを提案し,その存在を理論的に明らかにできたため,「おおむね順調に進展している」といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,可解な確率モデルを素朴にEuler-丸山法などでシミュレーションして,カオス同期における個々の振動子の性質や同期の持続時間などを明らかにしていく予定である。昨今の社会的情勢により流動的とはなるが,得られた結果を日本物理学会などを中心に発表して,議論を深めていく。また,これらの結果を,既知である非結合振動子系のものと比較し,ノイズ誘起カオス同期全体にわたる体系的な理解へとつなげる。
|
Causes of Carryover |
出張を予定していた学会が現地開催中止となったため。次年度は,この費用を活用してより積極的に学会発表を行っていく。
|
Research Products
(5 results)