2022 Fiscal Year Research-status Report
結合振動子系における独立ノイズ誘起のカオス同期現象の研究
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19K20360
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
奥村 圭司 一橋大学, 経済研究所, 助教 (60710530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リズム / カオス / 同期現象 / ノイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
結合振動子系とは,複数の振動子が相互作用する系のことであり,自然界や工学分野で広く見られる。カオス同期とは,カオス的な振動子のリズムが不規則ながらも一致する現象のことである。カオス同期は,電子回路やニューロンなどで実現されており,情報処理や通信などの応用が期待されている。本研究では,結合振動子系におけるノイズ誘起のカオス同期について,その存在を示すこと,発生メカニズムを理論的に解明すること,および,その工学的応用を模索することを目的としている。これまでに本研究では,平均場結合するリミットサイクル振動子に独立なノイズが作用する場合の可解な確率モデルを提案した。ここで可解な確率モデルとは,要素数が無限大となるときに外部からの白色ガウスノイズにより平均場項が収束し,解析的に解くことができるモデルのことである。可解な確率モデルは,複雑な現象を単純化して理解するための有力な手法となる。本研究で提案したモデルでは,独立ノイズの強度をパラメータとして変化させることで,ノイズ誘起のカオス同期の発生条件や性質を数値的に調べることができた。また,Heun法などによるシミュレーションを行って,カオス同期の持続時間や同期度合いなどについても詳細に解析してきた。 2022年度はカオス同期の応用例として,同期度合いの概念がレーザカオスを用いた秘匿通信におけるセキュリティの定量的評価にどう貢献できるか検討を行ったが,まだ十分な結果は得られていない。今後は,これらの課題に取り組むとともに,未発表の研究成果についても早急に論文としてまとめていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所内業務として研究所基幹サーバ群の管理・運用を行っており,内部向けサーバの仮想化と集約,各種システムの新規導入,学術雑誌の完全オンライン化などの業務で多忙となり,十分な研究時間を得ることが出来なかった。そのため,研究成果を論文としてまとめられておらず,遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
事業期間再延長の申請を行ったため,これまでの4年間の研究計画をさらに1年間延長した上で,カオスによる秘匿通信など応用を念頭に取り組んでいきたい。また,未発表の研究成果についても早急に論文としてまとめたい。
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Causes of Carryover |
所内業務多忙により研究成果を論文としてまとめる時間が十分に取れず,英文校正費や出版費用が未使用となったため。最終年度は残った費用を活用して積極的に論文投稿を行う。
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