2023 Fiscal Year Annual Research Report
結合振動子系における独立ノイズ誘起のカオス同期現象の研究
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19K20360
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥村 圭司 東京工業大学, データサイエンス・AI全学教育機構, 特任准教授 (60710530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リズム / カオス / 同期現象 / ノイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
結合振動子系とは,複数の振動子が相互に影響し合うシステムであり,自然界や工学分野で広く観察される。例えば,ホタルの同期した点滅,心臓の細胞のリズム,さらには電力網のような複雑なシステムにおいても,結合振動子系が見られる。カオス同期とは、カオス的な振動子が不規則ながらも一致したリズムを示す現象である。この現象は,電子回路や神経細胞などで実現されており,情報処理や通信などへの応用が期待されている。本研究では,結合振動子系におけるノイズによって引き起こされるカオス同期の存在を証明し,その発生メカニズムを理論的に解明し,さらにその工学的応用を探求することを目的としている。これまでの研究では,最初に,平均場結合したリミットサイクル振動子に独立したノイズが作用する場合の解析可能な確率モデルを提案した。このモデルは,複雑な現象を単純化して理解するための有力な手法となる。次に,提案したモデルを用い,独立ノイズの強度をパラメータとして変化させることで,ノイズ誘起のカオス同期の発生条件や性質を数値的に調べた。また,Heun法などのシミュレーションを通じて,カオス同期の持続時間や同期度合いについても詳細に解析した。 2023年度は引き続き,カオス同期の応用例として,レーザカオスを用いた秘匿通信におけるセキュリティの定量的評価において,同期度合いの概念がどのように貢献できるかを検討した。今後の課題として,この分野におけるさらなる実証的研究が必要であり,カオス同期の工学的応用に向けた具体的な方法論の確立を目指す。
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