2019 Fiscal Year Research-status Report
エッジ保存スプライン平滑化による不連続箇所を含む関数の推定とその応用に関する研究
Project/Area Number |
19K20361
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北原 大地 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (20802094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エッジ保存スプライン平滑化 / スプライン関数 / エッジ検出 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来,スプライン関数を用いて未知の関数を推定する際には,推定対象の関数に「定義域全体での連続性」を仮定していた.ところが,画像処理やレーダ信号処理においては,推定対象の関数が,多くの領域で微分可能ではあるものの,有限個の不連続箇所(エッジ)を含んでいる場合がある.このような関数は「区分的に滑らかな関数」と呼ばれる.区分的に滑らかな関数の推定に従来のスプライン補間やスプライン平滑化を用いると,エッジ周辺の構造を大きく歪めてしまうことがよく知られていた.スプライン補間の結果を利用して,関数が大きく変動している領域の中心にエッジがあると見なす方法も考えられるが,2次元以上のデータに対してはエッジの未検出・誤検出が頻出してしまい上手くいかない.このため,画像処理やレーダ信号処理の分野では,関数そのものを推定することを諦めて,代わりに有限個の離散標本値のみを推定する場合がほとんどであった.本研究では,(i)高次元データにおける複雑なエッジの特定と(ii)エッジを除く領域での平滑化を同時に行いながら関数そのものを推定するという非常に難しい問題に挑戦し,スプライン平滑化の改良によりその解決を図る. 研究初年度は,まず1次元のエッジ保存スプライン平滑化を提案し,信号処理分野のトップコンファレンスであるIEEE ICASSP 2019で発表を行った.提案手法では,データ整合性,エッジを除く箇所での関数全体の滑らかさ,エッジ数の3項の重み付き和の最小化問題として,1次元のエッジ保存スプライン平滑化を定式化した.エッジ数はある種のブロックl0ノルムとして表現でき,これをブロックl1ノルムに凸緩和することで,提案手法を凸最適化問題として定式化することに成功した.提案手法が,有限個の離散標本値のみを推定する従来のアプローチよりも優れた推定精度を示すことを数値実験を通じて明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1次元のエッジ保存スプライン平滑化を比較的簡便な形で定式化でき,最先端の従来手法である一般化全変動(Total Generalized Variation:TGV)を用いたデノイジング手法よりも優れたノイズ除去性能を発揮することに成功した.これにより,当初の予定通り,来年度は多次元(主に2次元)への拡張を行い,より一般化した形式でのエッジ保存スプライン平滑化を提案できると考えている. 他にも,当初想定していなかった研究成果として,2型糖尿病患者のデータ解析を通じて,スプライン平滑化を利用した新たな分位点回帰手法の着想を得た.医学や社会学で解析対象となるデータは,片側に裾が広い分布であることが多く,通常の回帰手法ではデータの性質を適切に表現しきれていなかった.分位点回帰は,いくつかのパーセンタイル曲線を回帰することで,データの特徴をより正確に表現する考え方で,これにスプライン関数の表現能力を加えることで更に柔軟なデータ解析手法が実現できると考えられる. その他,レーダ信号処理では,フェーズドアレイレーダのデータ圧縮に関するジャーナル論文が採録され,非線形ビームフォーミングの改良版や高精度な気象パラメータ推定法を国内会議で発表できた.音信号処理では,インパルス応答の性質を利用した教師あり音源分離に関する研究やGANによる自動作曲の研究を発表した.また,振幅スペクトログラムからの新たな音源復元手法や歪みエフェクタのモデリング手法も発表した.医用画像処理では,低線量CTにおけるマルチクラス辞書学習を利用した高精度画像再構成手法を国際会議で発表した.他にも,眼底写真に対する2種類のセグメンテーション手法を発表した.このように,当初予定していた以上の研究成果を続々と発表していくことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
IEEE ICASSP 2019で発表したエッジ保存スプライン平滑化は,1次元のデータのみにしか対応していなかった.今後は,この提案手法を2次元以上のデータにも対応できるように拡張していく.具体的には,1変数スプライン関数を2変数スプライン関数に拡張すればよいが,実際にはこの拡張は単純ではなく,いくつかの拡張方式が存在する.拡張方式によって最適化の際に要する計算量が変わってくることが考えられるので,なるべく精度を保ちながら,計算量が最も少なくなる拡張方式を模索する必要がある.また,IEEE ICASSP 2019の論文では,ブロックl0ノルムをブロックl1ノルムで凸緩和して最適化を行ったが,より理想的な連続緩和であるLinearly Involved Generalized Moreau Enhanced (LiGME)モデルと呼ばれる手法が昨年提案された.このLiGMEモデルをエッジ保存スプライン平滑化に導入することで更なる精度改善が期待される.その他,最適化問題を解く際に用いる交互方向乗数法(Alternating Direction Method of Multipliers: ADMM)アルゴリズムの高速化も検討する予定である. また,当初予想していなかったスプライン分位点回帰の研究も進んでおり,この研究の成果も国際学会等で発表を行っていき,スプライン関数の様々な応用の可能性を提示していきたいと考えている.
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Research Products
(18 results)
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[Presentation] 2型糖尿病患者における性差を考慮したBMIと残余リスクの管理状況の関係2019
Author(s)
北原 大地, 手塚 祐司, 関根 理, 冷 可, 姚 賽, 東 長佳, 山本 有香子, 小林 純, 鷲山 美樹, 巖西 真規, 平林 晃, 柏木 厚典
Organizer
第62回日本糖尿病学会年次学術集会
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