2020 Fiscal Year Research-status Report
エッジ保存スプライン平滑化による不連続箇所を含む関数の推定とその応用に関する研究
Project/Area Number |
19K20361
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北原 大地 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (20802094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エッジ保存スプライン平滑化 / スプライン関数 / 分位点回帰 / エッジ検出 / 凸最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目である今年度は,凸最適化の枠組みにおいて,どのようなコスト関数を用いればより精度を向上できる可能性があるのかを検証した.昨年度提案した1次元のエッジ保存スプライン平滑化では,データ整合性,エッジを除く箇所での関数の局所変動エネルギー,エッジ数の3項の重み付き和の最小化問題を定式化した.この際,エッジ数はある種のブロックl0ノルムとして表現でき,これをブロックl1ノルムに凸緩和することで,提案手法を凸最適化の枠組みで実現することに成功していた.しかしながら,近年,l0ノルムの凸緩和として,l1ノルム以外の関数を用いる手法が研究されており,本研究でもブロックl1ノルム以外の定式化の可能性を探るために,数理的に最先端のコスト関数の有効性を検証した.具体的には,「Linearly Involved Generalized Moreau Enhanced (LiGME)モデル」を圧縮センシングMRIと組み合わせる研究を行った.圧縮センシングMRIで使われていたコスト関数(指向性全変動)をLiGMEモデルに置き換えることで,比較的大規模な凸最適化問題におけるLiGMEモデルの有効性を世界で初めて示すことに成功した.この研究成果は,来年度開催される国際会議に採択済みであり,エッジ保存スプライン平滑化への応用も期待できる. D. Kitahara, R. Kato, H. Kuroda, and A. Hirabayashi,“Multi-contrast CSMRI using common edge structures with LiGME model,”EUSIPCO 2021. また,スプライン平滑化を利用した最頻区間回帰の研究も新たに開始しており,こちらも現在研究成果を纏めている最中である.その他,スプライン関数に関する招待講演を国内会議で行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は,凸最適化の枠組みにおけるエッジ保存の最先端数理技術である「Linearly Involved Generalized Moreau Enhanced (LiGME)モデル」を圧縮センシングMRIと組み合わせる研究をまず行った.長年の間,非凸関数であるl0ノルムの凸緩和にはl1ノルムを用いることが最適であると考えられていた.近年,LiGMEモデルを用いることでより理想的な凸緩和が達成されることが明らかになっていたが,ノイズ除去以外の応用ではその有効性はまだほとんど検証されていなかった.我々の論文では,圧縮センシングMRIの応用を通じて,比較的大規模な凸最適化問題におけるLiGMEモデルの有効性を世界で初めて示すことに成功した.この研究成果は,エッジ保存スプライン平滑化においても,ブロックl1ノルムをLiGMEモデルに変更することで,精度が向上する可能性があることを示唆している. 次に,昨年度から開始した分位点回帰の研究を発展させて,スプライン平滑化を利用した最頻区間回帰の研究を行った.最頻区間はデータの頻出傾向を可視化する最新の概念で,これをスプライン関数で柔軟に表現することで,データのより効率的な解析が実現できると考えられる.現在,研究成果を纏めている最中である. その他,音響信号処理では,インパルスの応答の性質を利用した音源分離,逆変換計算不要な振幅スペクトログラムからの信号復元,深層学習による歪みエフェクタモデリング,周波数間引き短時間フーリエ変換に関する研究を国際・国内会議で発表した.画像処理では,マルチクラス辞書学習を利用した低線量投影CT撮像,直交射影を用いたGANによる画像超解像,テンソル分解を用いたライトフィールドノイズ除去に関する研究をジャーナルや国際・国内会議で発表した.このように,当初予定していた以上の研究成果を続々と発表していくことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はまず,既に採択されている下記の国際会議での論文発表を行う.どちらの論文の研究内容もエッジ検出と深い関りを有している. H. Kuroda, D. Kitahara, and A. Hirabayashi,“A convex penalty for block-sparse signals with unknown structures,” IEEE ICASSP 2021. D. Kitahara, R. Kato, H. Kuroda, and A. Hirabayashi,“Multi-contrast CSMRI using common edge structures with LiGME model,”EUSIPCO 2021. その後,2次元データに対応したエッジ保存スプライン平滑化の開発を行う.具体的には,直方体格子上の2変数スプライン関数を用いて,2019年度に提案済みの1次元エッジ保存スプライン平滑化を2次元に拡張する.1次元エッジ保存スプライン平滑化では「データ整合性」と「関数の局所変動エネルギー」と「エッジ数」の重み付き和を最小化していたが,2次元に拡張する際には,「データ整合性」と「関数の局所変動エネルギー」を一定値以下に保つという制約の下で「エッジ数」のみを最小化する最適化問題を構築する.これにより,最適化問題を設定する際に必要なハイパーパラメータの調整が容易になると考えている.また,スプライン分位点回帰・最頻区間回帰の研究も進んでおり,これらの研究成果も順次ジャーナルに投稿していくことで,スプライン関数の応用の可能性を提示していく予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,2つの国際会議(ICASSP,EUSIPCO)を含む全ての学会発表がオンライン開催となり,学会発表時の旅費が無くなったため次年度使用額が生じることになった.2020年度末から2021年度初旬にかけて複数のジャーナル論文を既に投稿しているため,これらの論文の掲載料に次年度使用額を利用する予定である.
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Research Products
(15 results)