2019 Fiscal Year Research-status Report
解評価時間の不均一性に依存しない並列進化的アルゴリズムの提案
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19K20362
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
原田 智広 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (40755518)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 進化計算 / 並列計算 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,最適化問題に対する解法の一つである進化的アルゴリズム(EA)における効率的な並列化手法(並列EA:PEA)を確立することを目的とする.従来のPEAは最適化対象の解評価時間に差や偏りのような不均一性がある場合に短い計算時間で最適解を獲得できない問題がある.この問題に対し,本研究は解評価時間の差と偏りの不均一性によらないPEAの提案,およびその有効性を検証する. この目的達成に向けて,令和元年度では,解評価時間の差に対しては頑健であるが,偏りに対して性能が低下する非同期PEAを対象として,(サブテーマ1)解評価時間の偏りの大きな最適化問題に適用可能な非同期PEAの考案と,(サブテーマ2)解評価時間の偏りの大小によらず最適化可能な非同期PEAの考案に取り組んだ.(サブテーマ1)に関しては,まず解評価時間の偏りに対して非同期PEAの探索が評価時間の短い領域に偏ることを理論的に示した.具体的には,解評価時間と探索母集団,並列計算機の状態をそれぞれ確率モデルで表現し,最適化による解分布の遷移を解析可能にした.さらに,(サブテーマ2)に関して,(サブテーマ1)で確立した確率モデルに基づき,解評価時間の偏りによらず母集団分布の偏りを解消可能なEAの親個体選択手法を導出した.これらにより,解評価時間の偏り大小によらない非同期PEAを確立した. また,提案手法の実世界の最適化問題への適用可能性を検証するために,複数車種の同時多目的最適化問題と風力発電用風車の翼形状最適化問題を用いる実験に取り組んだ.特に,令和元年度には,進化計算シンポジウム2019において開催された風力発電用風車のプロペラ形状最適化問題を対象として最適化アルゴリズムの性能を競う進化計算コンペティション2019で多目的部門最優秀賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,解評価時間の差と偏りの不均一性によらず短時間で最適解を獲得可能なPEAの実現に向け,令和元年度では,(サブテーマ1)解評価時間の偏りの大きな最適化問題に適用可能な非同期PEAの考案と,(サブテーマ2)解評価時間の偏りの大小によらず最適化可能な非同期PEAの考案に取り組んだ. まず,(サブテーマ1)に関しては,解評価時間と探索母集団,並列計算機の確率モデルで表現し,世代交代による確率モデルの遷移を分析した.この研究の結果,解評価時間の偏りがある場合の非同期PEAの母集団分布を確率モデルで表現することに成功し,かつその収束状態から非同期PEAが解評価時間の短い領域に偏ることを理論的に示した.また,解評価時間の長い領域の選択確率を増加させることで母集団分布の偏りを解消できることを示した.確率モデルから導出される母集団分布が,実際の非同期PEAにより得られる母集団分布をよく近似することを確認した. 次に,(サブテーマ2)では,母集団分布の偏りを抑制するために解評価時間の逆数に比例した確率に基づいてEAにおける親個体選択・自然淘汰を実行することで,解評価時間の偏りの大小によらず母集団分布の偏りを解消できることを確率モデルから明らかにした.また,単純な非同期PEAを用いた計算機実験を通して,実際の最適化においても解評価時間の偏りによらず母集団分布の偏りを抑制できることを示した. これらの研究成果により,当初予定していた解評価時間の偏りの大小によらない非同期PEAの確立という計画に対して,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては,申請書に記載された計画をすすめることを基本とする.具体的には,(サブテーマ3)解評価時間の差と偏りの両方に対応可能な方法を探求する. その研究の推進方策として,令和元年度に確立した解評価時間の大小によらず最適化可能な手法と,申請者が提案した解評価時間の大きさに応じて非同期性を調整可能な半非同期PEAを組み合わせ,解評価時間の差と偏りを同時に考慮したPEAを確立する.具体的には,解評価時間の逆数に比例した選択戦略を半非同期PEAに導入することで,解評価時間の偏りによる母集団分布の偏りを抑制するとともに,適応的な非同期性の調整によって解評価時間の大きさによらない探索性能の向上を実現する. 提案手法の有効性を評価するために,解評価時間の差と偏りの大小関係を変更可能なベンチマーク問題を設計し,提案手法を適用する.また,実世界の最適化問題への適用可能性を検証するために,実世界の設計問題をもとにしたベンチマーク問題である複数車種同時最適化問題,風力発電用風車設計問題を扱う.
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Causes of Carryover |
令和元年度に購入を予定していた56コアCPU搭載の計算機の購入,ならびに年度末に予定していた出張が新型コロナウイルスの影響で中止になったため.
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Research Products
(13 results)