2019 Fiscal Year Research-status Report
データ駆動処理による顔印象の数理モデル化および定量的顔印象操作法の確立
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19K20387
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 航洋 早稲田大学, 理工学術院, 日本学術振興会特別研究員 (20817275)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 顔 / 印象 / 感性情報学 / 社会的認知 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,対人コミュニケーションの基底をなす顔印象の知覚感性について,データ駆動処理計算によりモデル化することを目的とする。本年度は主に以下2つの研究課題に取り組んだ。
研究1(顔印象空間の定義):顔印象はその定義が曖昧で,顔の物理特徴との対応関係が明確でないため,学術的な検討が十分に行われていなかった。本研究では,顔の信頼性,支配性,魅力をはじめとした多様な顔印象によって構成される顔印象空間の構造を明らかにするための調査を行った。その結果,日本人が顔印象を評価する際には,魅力と支配性が主要な印象次元を構成していることが明らかになった。本研究の成果については,総説・展望論文としてまとめ,査読付き国内誌に投稿し,現在査読審査中である。 研究2 (顔印象を規定する顔特徴の計算モデル化):顔印象空間を構成する主要な印象次元である,魅力と支配性を規定する顔特徴について,データ駆動処理計算に基づくモデル化を行った。その結果,魅力と支配性をそれぞれ規定する顔の物理特徴を特定し,それらの印象を独立に操作することが可能となった。本研究の一連の成果は,査読付き国際誌Royal Society Open Scienceに掲載された他,後続の研究については,現在査読付き国際誌に投稿し,審査中である。研究2に関する成果は国内外の複数の学術会議において発表し,日本認知心理学会優秀発表賞(技術性評価部門),電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究1,2に関する実験を進めることができた。本研究に関する成果は国内外の学会において随時発表し,一部の成果については査読付き国際誌に掲載された。研究1,2の後続の研究についても既にデータ取得が完了しており,現在研究成果を査読付き国際誌に投稿する準備を進めている。以上の点を踏まえ,研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感性拡大防止のため,次年度に予定していた,対面型の実験室実験の実施を停止せざるを得ない事態が想定される。そのため,当初の計画を変更し,Webブラウザを利用したオンライン心理学実験によってデータを取得するための研究環境の整備を進めている。こうした措置により,当初の予定していたスケジュールで実験データの取得を進めることができると考えている。
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Causes of Carryover |
本研究では,顔印象に寄与する顔特徴の数理モデル化の過程で,さまざまな計算アルゴリズムを導入する必要がある。本年度の研究計画については,概ね予定通りに実験を進めることができたが,一部の実験に関しては,情報科学分野における最新の計算モデリング手法を取り入れるため,準備期間を延長し,実験の実施を次年度に延期することとした。これに加え,本年度中に採択を予定していた論文の査読期間が延長されたため,論文掲載にかかる費用を次年度で支出する必要性が生じた。これらの理由から,次年度使用額が生じた。
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