2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a sugar tyoe discrimination in protein glycosylation based on protein subcellular localization
Project/Area Number |
19K20410
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
越中谷 賢治 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90806499)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | バイオインフォマティクス / 糖鎖 / 細胞内局在 / タンパク質翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖は核酸やタンパク質に次ぐ第三の生命鎖として知られ、糖鎖を形成する糖の 種類(糖種)には多くのバリエーションがあり、それぞれが特異的な生化学反応と 密接に関連している。とりわけ、O型糖鎖修飾は細胞膜表面に存在するタンパク質に 多く見られることから、ゴルジ体で修飾されると考えられてきた。ところが、糖鎖 の研究が進むにつれ、N-アセチルグルコサミン (GlcNAc) 修飾が核や細胞質、ミトコ ンドリアに存在する糖タンパク質に多く含まれることが報告されるようになった (Kreppel, L.K, et al.: J. Biol. Chem., 1997; Cao, W. et al.: PLoS ONE, 2013) 。したがって、 細胞内の糖鎖修飾システムの理解には、タンパク質が翻訳後に糖鎖修飾を受ける一 面に着目し、細胞内局在や局在化経路に応じて糖タンパク質を分類し、修飾された 糖種を明らかにすることが必要不可欠である。そのため、細胞内局在に寄与するシグナル配列をベースとし、細胞内での糖種分布を調査し、明らかにしてきた。さらに、実験的に確認するべく、人工的にタンパク質の局在をコントロールするためのモデルタンパク質を作製し、その局在を確かめるアプローチを確立してきた。 当該年度では、研究計画通りに進んでおり、昨年度に実験的アプローチが成功していることから、サンプルとして作製したモデルタンパク質の局在経路を新たに追加するために、モデルタンパク質が受けるGPI修飾に着目し、解析を行なってきた。とりわけ、GPI修飾は糖脂質をタンパク質へ修飾する反応であり、修飾されたタンパク質を細胞膜へ局在化させるため、その解明と糖鎖修飾との相関関係を明らかにしてきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
代表的なタンパク質のアミノ酸配列およびGPI修飾の有無が記載されているデータベースであるSwiss-ProtよりGPIアンカー型タンパク質を抽出してきた。特に、植物由来のGPIアンカー型タンパク質とヒトの代表的なGPIアンカー型タンパク質であるプリオンタンパク質を対象にGPI修飾機構に重要であるといわれている要因を解析し、比較することを行った。 まず、植物由来のGPIアンカー型タンパク質とヒト由来のGPIアンカー型タンパク質であるプリオンタンパク質を対象にアミノ酸配列N末端の疎水性値を算出した。その結果、ヒトプリオンタンパク質と比べ、植物由来のGPIアンカー型タンパク質は高い疎水性値を持ち、同時に長い疎水性領域を保持していることが明らかになり、大きな違いがあることが示された。 次にGPI修飾を受ける際に最も重要なタンパク質C末端部分の疎水性値を解析した。前項と同様に疎水性解析を行った結果、ほとんど同じ疎水性値を示しており、長さもほとんど変化がないことがわかった。その結果、GPI修飾を受ける領域では植物、ヒトではほとんど違いがないことが明らかにされた。 最後に、両者の疎水性領域を示しているアミノ酸配列に着目した。疎水性値の高いアミノ酸は複数存在しており、当該領域にどのようなアミノ酸が選択的に選ばれ疎水性値を保持しているかを調査した。その結果、植物由来のGPIアンカー型タンパク質では優位にイソロイシンとバリンが疎水性領域を形成しており、ヒトではほとんどがロイシンによって疎水性領域が形成されていた。この結果は、植物とヒトで存在するアミノ酸の数に依存している可能性が示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、科研費の最終年度であることから、本研究の成果発表・Web公開を目標とする。特に、これまでに明らかにしてきた哺乳類細胞内での糖種分布をベースに知識ベースとして公開することや、予測法への応用を目指す。また、実験的アプローチを可能としたことで、信頼性の高い情報を蓄積し、広く利用可能なデータベースの構築を行う。そのために、これまでの研究成果である下記内容の成果報告を行う。 タンパク質の細胞内局在性と糖種との相関を、バイオインフォマティクス解析によって明らかにした。これらの実験的検証に向けて、モデルタンパク質をコードする複数の遺伝子をクローニングし、モデルタンパク質の細胞内局在性を人工的に制御することに成功した。また、開発済みの予測法を改良し、新たにデータの更新を行い新規糖種判別法の開発を行う。
|