2019 Fiscal Year Research-status Report
沿岸域の都市化に伴う二酸化炭素循環変化と酸性化進行度の推定
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19K20436
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
久保 篤史 静岡大学, 理学部, 助教 (90803958)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 沿岸海域 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸海域における炭素循環は人間活動の影響を強く受けるため大きく変動し、外洋域に比べ海洋酸性化の進行も早く起こっていることが報告されている。そのため、二酸化炭素濃度を含む炭酸系パラメータの継続観測を行い詳細な時空間変動と変動要因を明らかにすることが必要不可欠である。本研究では、浜名湖における詳細な炭酸系データから二酸化炭素収支を推定し、加えて有機物分解実験や下水処理場からの有機物・二酸化炭素供給量推定を併せて行うことで変動要因を定量的に明らかにしようとするものである。 令和元年度は、静岡県水産試験場浜名湖分場調査船「はまな」に乗船し浜名湖全域で全炭酸、アルカリ度サンプルやクロロフィルなどのサンプルを採取し分析・解析を行った。浜名湖における二酸化炭素分圧は29~1476 μatmで変動していた。全ての観測点(14点)において明瞭な季節変化が見られず、年間を通してほとんどが大気に対して未飽和だった。これは活発な生物活動による二酸化炭素消費が有機物分解量を上回っているためだと考えられた。実際、クロロフィルa濃度・溶存酸素濃度も高かった。一方、浜名湖東部のみ二酸化炭素の過飽和になることが多かった。浜名湖東部でも中央部・西部同様、クロロフィルaが高かったにもかかわらず、溶存酸素濃度はやや低くなっていた。これは、佐鳴湖から大量の有機物が流入し、その有機物の分解による二酸化炭素生成が生物活動による二酸化炭素消費を上回ったためだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、静岡県水産試験場浜名湖分場調査船「はまな」航海より得られたデータ解析が主目的であった。得られた全炭酸・アルカリ度データから二酸化炭素分圧や炭酸カルシウム飽和度を算出した。また、炭酸系パラメータとクロロフィルa濃度、溶存酸素濃度などを併せて解析し、浜名湖における二酸化炭素分圧の季節変動と空間変動を明らかにすることができた。さらに、流域河川や下水処理場における炭酸系パラメータサンプル採取も行っており、浜名湖流域を含んだ炭素収支についての解析も行っている。以上より、当初の計画通り、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
浜名湖におけるアルカリ度と塩分には有意な正の相関関係が見られた。そのため、得られた回帰直線と過去の塩分データから過去のアルカリ度推定を行うことが可能である。そのため、現在浜名湖の公共用水域塩分データ(1995年~)を収集し過去のアルカリ度算出を行っていく。これを公共用水域pHデータ(1995年~)と合わせることで浜名湖における酸性化・二酸化炭素分圧の経時変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和元年度に予定していた下水処理場などの観測の一部を令和2年度に行うため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は主に出張旅費として使用する。
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