2019 Fiscal Year Research-status Report
海氷融解期の植物プランクトン分類群の違いは鉛直的な炭素輸送効率に影響するのか?
Project/Area Number |
19K20445
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高尾 信太郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 研究員 (80767955)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 南大洋 / 炭素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
海氷融解期の植物プランクトン分類群(珪藻類、ハプト藻類、緑藻類など)の変化が鉛直的な炭素輸送効率に及ぼす影響を明らかにするため、2019年度は耐氷型漂流系による連続観測を南大洋インド洋区の季節海氷域で実施した。南極観測船「しらせ」を用いて、2019年12月に海氷密接度90%以上の海域に耐氷型漂流系は投入し、海氷融解期を含む約2ヶ月間の連続観測を実施した。漂流系に設置したセンサーで水温や塩分、光環境、植物プランクトン現存量の指標となるクロロフィル蛍光などのパラメータを複数深度で連続取得することに成功した。また、同船において植物プランクトン分類群を推定するための植物色素サンプルおよび多波長励起蛍光光度計による蛍光スペクトルを取得した。 南極海における植物プランクトン群集組成推定に関して、事前準備として取得した2017年度航海の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による植物色素分析結果、多波長励起蛍光光度計の蛍光スペクトルデータ、既存の色素組成推定モデルを用いて南大洋における植物色素組成の再現性を評価した。その結果、既存モデルでは南大洋の植物色素組成を上手く再現性できないこと、南大洋のデータを用いたモデルのパラメータ調整が必要であることが示された。 また、本研究に関連する成果を学術論文1報(Deep-Sea Research PartⅠ)、国際会議1件(Ocean Sciences Meeting 2020)、国内会議1件(日本海洋学会)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で2019年度に予定していた耐氷型漂流系を用いた観測を予定通り海氷融解期間に実施した。また漂流系に設置した多波長励起蛍光光度計を含む複数のセンサーで約2ヶ月間にわたる複数深度の連続データ取得に成功した。次年度以降のデータ解析によって、海氷融解期の植物プランクトン分類群の違いが鉛直的な炭素輸送効率に及ぼす影響について明らかにできると期待されます。 また、関連する研究成果を学術論文1報、国際・国内会議2件で発表した。 以上のことから、進展はほぼ計画通りであり、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度取得した植物色素サンプルの分析、および多波長励起蛍光光度計データの処理を主に行う。また、事前準備として取得した2017年度および2018年度航海の同データ群を使用し、南極海に生息する色素組成の異なる植物プランクトン分類群の識別を可能とする推定モデルの開発を進める。推定モデルの検証に使用する2020年度航海のデータ取得に向けた準備を行うとともに、本研究で得られた成果を日本海洋学会(函館)などで公表する。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた分析用消耗品の交換時期が次年度に繰り越されたため、物品の購入時期を次年度に変更した。
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