2019 Fiscal Year Research-status Report
Understanding mechanisms in removal of aberrant adducts from ends of genomic DNA breaks caused by radiation and other factors
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19K20449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 真太郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (20837869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DNA二重鎖切断修復 / II型DNAトポイソメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線などの環境要因や内的要因から自然発生するゲノム切断の多くは切断端が化学修飾された「汚い」切断であり、発がん性の強いDNA損傷である。この「汚い」ゲノム切断の修復はまず切断端を「きれい」(3′末端に水酸基、5′末端にリン酸基が付いた状態)にする必要があるが、分子機構の多くが不明である。鍵となる障害は、「汚い」末端を「きれい」にする過程の高解像度検出法の欠如である。この問題を解決するため、切断端の異常な化学修飾の除去を測定するバイオアッセイを開発することが本研究の目的である。 初年度はまずDNA切断を制御する系の開発を行った。この目的達成のために、我々はDNAのもつれを解消するDNAトポイソメラーゼ(Top2)がしばしば触媒に失敗して「汚い」DNA切断を作ることに着目した。CRISPR-dCasを用いてTop2を人為的に特定の遺伝子座へ一過的に誘導するための細胞株の作成に取り組んだ。 次に、「汚い」切断を「きれい」な切断にする修復機構を正確に調べる手法の開発に取り組んだ。Spo11というTop2の類似酵素はDNAを切断した後に切断末端に共有結合する。我々はこれまでSpo11が末端に共有結合した「汚い」ゲノム切断からSpo11を除去する過程を検出する手法を開発してきた。この手法は出芽酵母を用いて開発されたが、我々は哺乳類細胞を解析できるように手法の改変を行った。 次年度は上記の手法を用いてTop2によるDNA切断を解析することで、「汚い」ゲノム切断を「きれい」にする修復機構を解明する。そして、放射線などにより自然発生する「汚い」ゲノム切断を修復する経路が機能低下する結果、変異が蓄積する機序を理解する基盤を提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の通り当初予定した細胞株を作成し、実験の条件検討を行った。 1. 一過的に部位特異的なゲノム切断を行うための細胞株の作成 本研究では病的Top2-DNA複合体を「汚い」切断末端のモデルとして解析し、「汚い」ゲノム切断を「きれい」にする機構を解明する。そのためにTop2のDNA切断を制御する。その実験手法はNicolas博士ら(Curie研究所)が開発したSpo11-CRISPR-dCasの手法の応用である(Nucleic Acids Res., PMID: 28977556)。すなわちG0/G1期に特定遺伝子座へリクルートしたヒトTop2β-CRISPR-dCasのDNA切断を解析する。 我々は、実験の対照として、まず「きれい」なDNA切断を導入するための細胞を作成した。具体的にはヒトTK6細胞とMCF7細胞を用いて複数の遺伝子座にCRISPR/Cas9をリクルートし、DNA切断を一過的に誘導する株を作成した。 2. DNA切断修復を高感度かつ高解像度で解析する実験手法の最適化 DNA切断修復の解析には、我々が開発した手法を応用する。具体的にはDNA切断末端を酵素で平滑化し、アダプターを付けて配列を読むことにより、塩基レベルでDNA修復中間体を決定する(Science 2017, PMID: 28059759)。この手法は出芽酵母を用いて開発されたが、我々は哺乳類細胞を解析できるように手法を改変した(印刷中)。本研究は実験に必要な複数の細胞株の作成と実験手法の最適化が必要であるが、初年度は後者を重点的に行った。その結果、細胞株の作成は当初の計画よりやや遅れている。しかし、実験手法の最適化は非常に順調に進んだ。以上から、総合的にはおおむね順調に進んでいると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ヒトTK6細胞とMCF-7細胞を用いてTop2β-CRISPR-dCasを一過的に発現させるための株を作成する。 2. 初年度に最適化した手法を用いてDNA修復の過程を解析する。そのために大規模な次世代シーケンサー解析を行う。Top2β-CRISPR-dCasを発現させて「汚い」切断末端を持つDNA切断を誘導した場合と、CRISPR/Cas9を発現させて「きれいな」切断末端を持つDNA切断を誘導した場合それぞれにおいて、DNA修復中間体を検出し、両者のDNA修復過程を比較する。 3. 我々は様々なDNA修復遺伝子が欠損したTK6細胞を有する。これら既存のDNA修復変異体を用いて2と同様に実験する。そのことにより、「汚い」切断末端と「きれいな」切断末端を持つDNA切断におけるDNA修復遺伝子の役割を比較する。 4. DNA切断修復後に生じる変異のパターンを解析する。Top2β-CRISPR-dCasを一過的に発現させた後、DNA切断箇所の周辺を配列解析する。同様にDNA修復の変異体を解析し、修復の正確性における修復因子の役割を明らかにする。 5. TK6細胞とMCF-7細胞の結果を比較することで普遍性を検証する。 以上により、Top2による「汚い」ゲノム切断を「きれい」にする機構を解明するとともに、自然発生する病的Top2β-DNA複合体を修復する経路の機能低下によって、変異が蓄積する機序を理解する基盤を提供する。
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Causes of Carryover |
本研究で最も経費が掛かる実験は、次世代シーケンサー解析である。まだ試行錯誤の段階でありどれだけコストが膨らむのか不明出るので次年度に繰越した。実験条件が確立したら次年度に大規模なシークエンシング解析を実施する計画である。
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Research Products
(1 results)