2021 Fiscal Year Annual Research Report
農作物の収量に対するオゾンの影響評価 -植物成長モデルを用いた新規手法-
Project/Area Number |
19K20459
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
黄瀬 佳之 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00818528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オゾン / 光合成 / 収量 / 植物成長モデル / 影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本では農作物の収量に対するオゾンの悪影響が懸念されていることから、本研究では、オゾンの影響プロセスを組み込んだプロセスベースの植物成長モデルを新規開発し、日本の農作物の収量に対する現状濃度のオゾンの影響を評価することを目的とした。今年度は前年度までに開発・精度検証した植物成長モデルを使って、オゾン濃度が比較的高い関東圏で広く栽培されているコマツナを対象とし、オゾンによる収量低下率の現状影響評価を行った。影響評価の対象年および対象月は、それぞれ2010-2019年ならびに4-10月とした。一般的に大気中のオゾン濃度は春および梅雨明けに高くなるが、オゾンによるコマツナの収量低下率の予測値は7月に最も高く、4-5月は比較的低かった。これは、気温が高いとオゾンの悪影響が顕著になるという現象を反映した本モデルを用いた影響評価によって明らかになった。また、7月におけるオゾンによる収量低下率(10年平均)は都道府県によって異なり、10-27%であった。さらに、オゾン濃度や気温が比較的高い年には、最大で約40%の収量低下率であることも示唆された。以上のことから、オゾン濃度が高く、かつ、比較的気温が高い7月頃には、現状濃度のオゾンによって日本の農作物の収量が顕著に低下していることが示唆され、将来にわたって農作物の収量を高く維持していくためには、オゾン濃度の低減対策のみならず温暖化対策も重要だと考えられた。
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