2019 Fiscal Year Research-status Report
定点音響観測手法の確立と沿岸性小型鯨類の生態解明・環境影響評価への応用
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19K20460
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 里子 京都大学, 国際高等教育院, 特定講師 (40723804)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 受動的音響観察 / スナメリ / イルカ / 小型鯨類 / 海棲哺乳類 / 水中生物音響 / 音響リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
1)定点音響観測の実施(伊勢湾・三河湾スナメリ調査):伊勢湾・三河湾のスナメリ個体群について、生息範囲の中心でありコアエリアにあた る三河湾湾口部と、端のエッジエリアあたる伊勢湾奥の名古屋港において音響イベント記録計を設置し、定点音響観測調査を実施した。 三河湾湾口部では約半年間の、名古屋港では約1年間のデータを、各海域で複数地点から取得することができた。 2)解析アルゴリズムの開発:三河湾において取得したデータから、IgorProとPythonを用いて、教師あり機械学習によるスナメリソナー音の自動検出を試行した。ランダムフォレスト、SVMを用いたところ、両方法で同一地点検出率誤検出率は大差なく、時間内においてはある程度汎用性が担保された。今後他時間帯、他月、他年度、他地点でどのくらい判別可能かを検証する必要がある。 3)他水域へ応用:マレーシアのランカウィ諸島において調査の実施可能性を検討した。潮流や濁度などの条件だけでなく、ワニなど危険動物の存在による潜水作業の困難性、人為的窃盗被害の可能性が示唆された。 4)生態解明・環境影響評価:名古屋港で取得したデータを解析し、明らかになった生態情報について、結果をまとめ学会にて口頭発表をおこなった。また、飼育個体を用いて実験を実施し、環境影響を評価する手法について検討した。 研究について、Webおよびメディア媒体を通じて一般向けに情報を発信した。種保存会議やあいち・なごや生物多様性EXPOなどでも展示を行い積極的にアウトリーチ活動に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全ての項目において、ほぼ計画通りかそれ以上に研究を進めることができた。 ただし、2018年度科研費(研究活動スタート支援)で購入した機材を名古屋港で設置中、盗難被害にあい、貴重なデータを失っただけでなく機材そのものを紛失したことは大きな痛手となった。 また、上述した通り、マレーシアのランカウィ諸島において調査の実施可能性を検討したところ、潜水作業の困難性、人為的窃盗被害にあう可能性が示唆された。2019年度すでに名古屋港で機材を1台盗難されていたことも鑑み、2019年度はマレーシアにおける機材の設置を見送った。今後検討を重ね、さらに安全に気をつけて調査に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、2020年度さしあたって4月の調査は実施不可能となった。今後、継続予定の伊勢湾三河湾における調査は中止になったとしても既存データである程度の手法開発および生態解明を試みることはできる。しかし、当初予定していたよりも短期的な生態情報となる可能性がある。 また、他水域への応用として検討していたマレーシアにおける調査についても、当局より6月までの調査は控えるよう指示がでており、今年度実施できるか否か不透明である。 以上の状況を鑑み、本年度は、調査を安全に実施できる可能性を探るとともに、初年度に取得したデータで汎用性の高い解析アルゴリズムを開発できるよう、注力する。
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