2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K20462
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中井 亮佑 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90637802)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微生物 / 環境DNA / 極地 / 凍土 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、昨年度のPCRアンプリコン解析で獲得した凍土氷中に存在する微生物(主にバクテリアとアーキアの原核生物)の系統的新規性と潜在分布を評価した。公共のDNAデータベースとの照合により、(1)新規性は低いものの、標的とした地域以外の凍土環境にも広く分布するActinobacteria、また(2)一部の試料のみに特徴的に準優占する難培養性のAcidobacteriaやGemmatimonadetes に帰属する系統群を見出した。特にAcidobacteria は、超微小微生物を標的とした孔径0.2マイクロメートルフィルターの濾過画分からも検出された。本研究では、孔径0.2マイクロメートルフィルターで濾過した氷融解液をさらに小さな孔径0.1マイクロメートルフィルターで再濾過することによって、試料中の極小微生物を回収しており、濾過画分から検出されたものは現場で極小の細胞サイズで存在する可能性がある。さらに、微生物群集データとその由来となる凍土氷の推定年代にもとづき、各系統の変動を予察的に解析した。その結果として、検出頻度は高くないものの、メタン生成菌として知られるMethanobacterium 属の増減の傾向が見られた。現在、他の系統群の増減パターンも確認しているところである。次に、これら氷中微生物の物質循環インパクトの特徴付けに向けて、昨年度に検討したプロトコールを用いて凍土氷から高分子DNA の抽出を試みたが、メタゲノム解析に十分な量と質のDNAが得られなかった。また、新型ウイルスの状況により、さらなる抽出条件の検討が困難であったため、本研究の期間の延長申請を行い、次年度も引き続き研究を遂行することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の推進により、凍土氷に含まれる微生物(主にバクテリアが優占)の系統的多様性や潜在分布が明らかになった一方で、研究実績に記載の通り、DNA 抽出効率の課題などにより、その次のオミクス解析に遅れが生じている。以上のことから、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、凍土氷からの高分子DNA の抽出に取り組んだうえで、十分量のサンプルが確保できた場合は、メタゲノム解析に供する計画である。しかし、研究期間内での抽出や解析が困難と見込まれる場合は、当該試料からの微生物の分離培養を試みる。培養に依存した方法では、試料中の一部の微生物しか調べられないが、分離菌株から生理・生態機能に関わる情報の獲得に努める。
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Causes of Carryover |
当初予定していたメタゲノム解析を実施できず、その外注分析費用などを次年度に活用することにしたため。また、新型ウイルスの状況により、旅費の使用がなくなったため。引き続き諸解析に十分なDNA の抽出作業に努めるが、複数回の再試で困難な場合は、研究の推進方策に記載の通り、微生物の分離培養に必要な実験試薬を購入して実験を遂行する計画である。
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