2022 Fiscal Year Research-status Report
水溶性有機炭素の成分ごとの新たな多元素同位体測定と発生源の解明
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19K20463
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Research Institution | Japan Automobile Research Institute |
Principal Investigator |
須藤 菜那 一般財団法人日本自動車研究所, 環境研究部, 研究員 (70791424)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粒子状物質 / 水溶性有機炭素 / 安定同位体 / 植物燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小粒子状物質(PM2.5)は人体への健康影響が懸念されており,これまで様々な環境対策が進められてきた.PM2.5の約3割を炭素成分が占めており,中でも有機炭素は発生源から直接排出される一次粒子と揮発性有機化合物等が大気中で反応してできる二次粒子の両方を含んでおり,数千種類の成分が存在する.そのため,発生源が非常に複雑であり,未だに実態が解明されていないのが現状である.そこで本研究では,有機炭素の中でも水溶性を示す水溶性有機炭素に着目し,炭素安定同位体比という指標を用いて実態を解明することを目的とする.水溶性有機炭素に含まれる炭素安定同位体比を測定した研究例は短期間の観測事例が多いため,本研究は長期間の大気観測を行うことで実態を解明することを目指す. 茨城県つくば市と秋田県由利本荘市の2地点でPM2.5試料を2年間捕集し,PM2.5に含まれる水溶性有機炭素中の炭素安定同位体比を測定した.秋田県由利本荘市では,2019年2月から4月にかけて最も重い炭素安定同位体比が観察されて,トウモロコシなどのC4植物燃焼が長距離輸送されている可能性が示唆された.本成果は,Atmospheric Chemistry and Physics誌に投稿し受理された. 2022年度は,PM2.5試料に含まれる植物燃焼由来の指標であるレボグルコサン濃度を誘導体化/GC-MS法を用いて測定した.茨城県つくば市では,11月末から12月末にかけて100 ng/m3を超える高濃度のレボグルコサンが確認された.今後は,固相抽出を用いて水溶性有機炭素を極性の違いで分離する方法の構築を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
育児休業から復帰して研究を再開したが,研究中断期間の遅れがあり研究全体の進捗状況としてはやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
検討途中であった固相抽出を用いて水溶性有機炭素を極性の違いで分離する方法の構築を進める.具体的には,最適な固相抽出の選択,サンプルの前処理,試料溶媒,溶出溶媒等について検討する.
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Causes of Carryover |
育児休業の取得により2022年度途中から研究を再開したため,次年度使用額が生じた.2023年度は,実験に必要な機器や試薬などの購入費用として使用する.
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Research Products
(2 results)