2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparison of toxicity of micro- and nano-sized plastic particles
Project/Area Number |
19K20471
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
井手 鉄哉 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 主任研究官 (60837607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / ナノプラスチック / 粒子サイズ / 毒性影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近年,海洋や河川等の環境中から検出されているマイクロプラスチック(直径0.1-5000 um)やナノプラスチック(直径0.1 um以下)と呼ばれるプラスチック片について,サイズの違いによって生体へ与える影響が異なる可能性について明らかにする. 初年度は,広く生活に浸透しているプラスチックの1つであるポリスチレン(PS)粒子を用い,マイクロPS粒子及びナノPS粒子それぞれについて,急性毒性影響を評価した.6週齢の雌雄F344ラットの各4匹/群にナノPS粒子(粒径0.03 um)及びマイクロPS粒子(粒径0.3um)を0(対照群),200または1000 mg/kgの用量で単回経口投与し,急性経口投与毒性試験を実施した.投与日(観察第1日)から14日間観察を行い,その間,体重を測定して対照群と比較し,観察第15日に安楽殺して病理解剖を行うと同時に,肝臓,腎臓,脾臓及び心臓を摘出し,重量を測定した.その結果,観察期間中に死亡動物はなく瀕死動物もみられなかった.一般状態観察では,ナノPS粒子1000 mg/kg投与群の1例のみで一過性の自発運動低下がみられたが,すぐに回復したことから,毒性学的意義は乏しいと判断した.体重測定では,投与群と対照群の間に有意な差はみられなかったが,ナノPS粒子1000 mg/kg投与群では雌雄ともに体重増加抑制の傾向が認められた。剖検時の全身諸臓器の病理学的検査では,いずれの動物にも肉眼的異常所見はみられなかった.臓器重量測定では,雌のナノPS粒子1000 mg/kg投与群において肝臓の絶対重量の有意な低下が認められたが,相対重量に変化はなく,毒性学的意義の乏しい変化であると判断した. 以上の結果から,本研究で用いたマイクロPS粒子及びナノPS粒子の1000 mg/kgの単回経口投与では,雌雄の動物に毒性学的影響は及ぼさないと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実施に必要な量のマイクロPS粒子及びナノPS粒子の手配・輸入に時間を要し,研究の開始が遅れたことから,進行が遅れている.しかしながら,本研究の目的は各粒子サイズのPS粒子を暴露した際の生体影響の差異について明確にすることであり,初年度においてすでにマイクロPS粒子及びナノPS粒子の急性毒性を評価し,マイクロPS粒子及びナノPS粒子の1000 mg/kgの単回経口投与では雌雄の動物に毒性学的影響を及ぼさないことを明らかにし終えたことから,次年度以降は計画通りに研究を進めることが可能となると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロPS粒子及びナノPS粒子を実験動物等に暴露した際の生体影響の差異についてさらなる検証を行うため,反復暴露による生体影響及び組織分布の差異に加え,細胞内動態の差異について検討することを目指す. 反復暴露による生体影響及び組織分布の検討については,初年度の急性毒性試験の結果に基づき,同サイズの蛍光標識したマイクロPS粒子及びナノPS粒子のF344ラットを用いた反復経口投与毒性試験を実施し,投与期間中の一般状態観察,投与期間終了時の血液学的検査,血清生化学的検査や主要臓器重量を測定し,全身諸臓器の病理組織学的検査を実施して生体影響の差異を検証すると同時に,蛍光顕微鏡等を用いた主要臓器におけるマイクロPS粒子及びナノPS粒子の体内分布についても検証する予定である. また,細胞内動態の検討については,マイクロPS粒子及びナノPS粒子のポリスチレンの細胞内における動態の特性を検討するため,腸管上皮細胞株や皮膚角化細胞株等の培養細胞に蛍光標識したマイクロPS粒子及びナノPS粒子を添加し,24時間後の細胞を詳細に観察することで,細胞内取り込みの有無やその取り込み経路,細胞内小器官への到達性等の細胞内動態に関して精査し,経口暴露や経皮暴露時の細胞への影響について知見を得る予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:上述のように,研究の開始が遅れたことから初年度は急性毒性評価のみを実施したことに加えて,急性毒性評価にあたって,必要最小限の投与群としてマイクロPS粒子とナノPS粒子それぞれについて低用量群と高用量群の2群,必要最小限の匹数として1群4匹を設定したことにより,供試動物数が削減されたことから,次年度使用額が生じた. 次年度使用額の使用計画:各粒子サイズのPS粒子の反復暴露による生体影響の検討の際,同時に蛍光顕微鏡等を用いた主要臓器のおけるPS粒子の体内分布の検証を行うため,初年度の急性毒性試験と同サイズの蛍光標識したマイクロPS粒子及びナノPS粒子を購入する.
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