2021 Fiscal Year Research-status Report
鉱山跡地の先駆植物が樹木実生に提供する、機能性微生物感染のためのセーフサイト
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19K20473
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
春間 俊克 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (40836417)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重金属ストレス / ススキ / アカマツ / 内生菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉱山跡地の緑化では森林形成のために樹木実生の定着が必要となる。調査地とした鉱山跡地ではススキの株の内側のアカマツ実生が正常に生育していた一方、ススキの株の外側のアカマツ実生では葉の褐変が観察され、環境ストレスを受けていると考えられた。ススキは様々な鉱山跡地の自生植物であり、内生菌を根に感染させることでAl耐性を増強する。そこで、調査地ではススキの内生菌がアカマツ実生にも環境ストレス耐性を付与すると仮定した。本研究の目的は、鉱山跡地においてススキがアカマツ実生の初期定着を促進する機構を解明することとした。 調査地においてアカマツ実生の生残調査を行った結果、枯死率は極めて低く、1年目で生残した実生の多くは2年目でも生残しやすいことが明らかとなった。また、1年生のアカマツ実生は、当年生のアカマツ実生と同様に根に高濃度のFeを蓄積していることが確認された。そのことから、アカマツ実生は根においてFeの解毒機構を有すると考えられた。そこで、Feを高濃度に含んでいたアカマツ実生の根からFe解毒物質の抽出を行った。その後、高速液体クロマトグラフィーおよび比色定量法を用いてFe解毒物質の同定・定量を行ったところ、フェノール性化合物および縮合タンニンが含有されていることが確認された。以上のことから、アカマツ実生は根においてFe解毒物質を産生することでFeを解毒していることが明らかとなった。このFe解毒機構は当年および1年生のアカマツ実生のいずれにも共通して確認され、鉱山跡地などの重金属ストレス下においてアカマツ実生が生残するために重要なFe解毒機構であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は調査地における1年生のアカマツ実生と当年生のアカマツ実生と比較して生残率や、蓄積している重金属濃度、重金属解毒物質が異なるかを明らかにすることを目的としていた。本年度において、現地調査を実施したところ、1年生のアカマツ実生は、当年生のアカマツ実生と比較して生残率が安定することが明らかとなった。1年生の樹木実生の根に含まれる金属解毒物質について、高速液体クロマトグラフィーを用いて同定および定量したところ、フェノール性化合物が検出された。以上の結果を得られたことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
樹木実生は根に高濃度のFeを蓄積しており、フェノール性化合物をFe解毒物質として産生していることが明らかとなった。他にFe解毒物質として知られる有機酸の分析はまだ行っていない。そこで樹木実生の根から抽出した金属解毒物質である有機酸などを、ガスクロマトグラフィー-質量分析計などを用いて同定および定量を行い、樹木実生のFe耐性機構を考察する。また、根から分離された内生菌と植物病原菌のアカマツ実生への生育阻害等の影響を評価することで、内生菌が植物病原菌の生育し、樹木実生への感染を抑制しうるか考察する。それと共に、実際に内生菌あるいは植物病原菌、および両者を滅菌したアカマツ実生に接種する。一定期間栽培後、生残率や生長量および蓄積した元素濃度等を測定し、樹木実生に対する内生菌や植物病原菌の影響を評価する。以上の実験から樹木実生を中心とした内生菌、植物病原菌の関係や樹木実生の生残要因を解明する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、令和3年度に予定していた出張をキャンセルしたことや、それに伴う実験消耗品の購入を見送ったことにより次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和4年度分経費と合わせて、実験消耗品の購入等に使用する。
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Research Products
(13 results)