2019 Fiscal Year Research-status Report
最終処分場での硫黄酸化細菌が改質硫黄水銀固型化物の水銀溶出・揮発に及ぼす影響評価
Project/Area Number |
19K20479
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
尾形 有香 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (50714200)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水銀 / 改質硫黄水銀固型化物 / 硫黄酸化細菌 / 最終処分場 |
Outline of Annual Research Achievements |
廃水銀および廃水銀等は、硫化・固型化し、改質硫黄水銀固型化物(以下、水銀固型化物)とした上で、埋設することが規定されている。水銀固型化物の物理化学的特性は、高い安定性を有することが確認されているが、微生物反応が水銀固型化物の安定性に及ぼす影響は明らかとされていない。本研究では、硫化金属のバイオリーチング能力と最終処分場での存在が確認されている、硫黄酸化細菌に着目し、硫黄酸化細菌が水銀固型化物の劣化、水銀の溶出・揮発に及ぼす影響を明らかとすることを目的とする。 好気性の独立栄養細菌である硫黄酸化細菌の増殖維持とガス状水銀をトラップするための水銀捕集菅を設置した密閉バイアル試験系を構築するとともに、最適条件について検討した。この試験系を用いて、破砕された水銀固型化物(粒径1mm以下)を対象とし、硫黄酸化細菌の存在有無による、水銀固型化物からの水銀の溶出・揮発に及ぼす影響について実験的に検証した。その結果、硫黄酸化細菌の存在によって、水銀固型化物からの水銀の溶出・揮発が促進されることが明らかとなり、植菌系における水銀の揮発量は、無菌系と比べ、18 - 58倍高い値を示した。また、水銀固型化物から溶出した水銀は、速やかに揮発することが確認された。最終処分場において、水銀廃棄物を長期的に適正管理するためには、微生物反応による水銀放出にも留意する必要が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硫黄酸化細菌の増殖維持とガス状水銀を捕捉可能な、密閉バイアル試験系を確立できた。これによって、定量試験が実施可能となり、硫黄酸化細菌の存在によって、水銀固型化物からの水銀の溶出・揮発が促進されるという、新規性の高い知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立した試験系を用い、硫黄酸化細菌の種が、水銀固型化物からの水銀の溶出および揮発に及ぼす影響を検証する。各種パラメータを取得し、硫黄酸化細菌による水銀固型化物からの水銀ガス放出挙動のシミュレーションについて検討する。また、硫黄ポリマーの開裂及び硫化物からの金属の溶出や、水銀の揮発に関与する細菌の機能遺伝子のレビューを行い、候補遺伝子を整理する。これらを元とし、水銀固型化物の劣化、水銀の溶出・揮発に関与する機能遺伝子の推定を試みる。
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Causes of Carryover |
当初、DNA抽出自動化装置の購入を予定していたが、研究所内の他センターの遺伝子解析を専門とする研究者と良好な連携体制を構築できたため、本年度の購入を控えることが出来た。次年度以降に実施する、試験系の消耗品およびシミュレーションソフト等に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)