2019 Fiscal Year Research-status Report
CFRP熱分解ガス中の有害物除去を指向した含酸素芳香族の低温改質用触媒の開発
Project/Area Number |
19K20484
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
大島 一真 成蹊大学, 理工学部, 助教 (60734275)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | フェノール水蒸気改質 / ペロブスカイト酸化物担体 / 炭素繊維強化プラスチック / 有害物除去 / 熱分解リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクル促進を目的として、CFRP熱分解中に発生する含酸素重質炭化水素を始めとする有害物質を、低温で無害化する触媒プロセスの開発を行う。初年度はCFRP熱分解ガスの軽質化およびモデル物質となるフェノールの水蒸気改質触媒の探索を行った。CFRP熱分解リサイクルは、炭素繊維の熱損傷を抑制するため500℃程度で実施される。そのため樹脂の熱分解が十分に進行せず、エポキシ樹脂を構成する含酸素重質炭化水素を始めとする有害物質が多く排出される。これらの排出がCFRPリサイクルプロセス拡大の障壁となっており、熱分解温度以下で無害化する触媒プロセスの開発は重要である。まずは熱分解ガスに含まれる重質成分を軽質化するクラッキングに着手した。重質炭化水素のクラッキングは、主に酸触媒を用いて実施されているため、本研究では固体酸であるゼオライトを中心に探索を開始した。その結果、熱分解温度の指標である500℃以下で、重質成分がフェノールに転換できることを見出した。また固体酸触媒の酸性質と、得られる生成物分布を比較することで、最適な酸強度・酸量があることを見出した。酸点が豊富にある場合には、フェノールが逐次的に反応し、より反応性の乏しいナフタレン等の重質成分に異性化されることがわかった。またクラッキングの反応温度を350℃程度まで低温化できることを見出し、本研究の目的である、熱分解温度以下での無害化を達成できることを示すことができた。次に軽質化したフェノールを更に水素に転換する水蒸気改質にも着手し、ペロブスカイト型酸化物を担体に用いることで、反応性が向上することを見出した。一方で水蒸気改質の反応温度は未だ550℃以上を必要とし、熱分解温度以下の要件を満たしていない。残りの期間で更に反応性の高い触媒の開発を遂行する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CFRP熱分解ガスの成分分析を詳細に行ったところ、フェノールよりも重質な含酸素炭化水素が多く含まれていることが分かった。そのためフェノールをモデル物質としてCFRP熱分解ガスを無害化するプロセスを研究するためには、含酸素重質炭化水素を軽質化する必要性が高いと判断した。そこで当初の計画では最終段階で実施する予定であった、実際の熱分解ガスでの評価を前倒しし、熱分解ガスのクラッキングによる軽質化を優先して実施した。そのため当初の初年度の目標であった熱分解温度以下でフェノール水蒸気改質に活性を示す触媒を見出すまでには至っておらず、やや遅れている状況と判断した。一方で、最終年度で実施予定であった実際のCFRP熱分解ガスの無害化に関する知見を深めることができ、水蒸気改質触媒の最適化が行えれば、速やかに次の段階に移行できる準備が整った。すなわち、CFRP熱分解ガスを熱分解温度以下で無害化するためには、排出される重質炭化水素の軽質化が必要であり、その手法としてゼオライトを用いたクラッキングが有効であることを見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
フェノール水蒸気改質に有効なペロブスカイト型酸化物担体の知見を活かし、今後は表面特性に着目し、その最適化を進める。具体的にはフェノール吸着サイトとなる塩基点を表面に修飾する手法を検討し、フェノールの反応性を向上させることを狙う。また得られた触媒について、分光学的な手法を用いて表面特性を評価し、高活性を示した因子を明らかにする。 最終的なCFRP熱分解リサイクルプロセスに導入する際には、初年度で見出したクラッキングの知見を活かし、軽質化されたガスをターゲットに水蒸気改質の反応性を評価する。
|
Causes of Carryover |
表面分析装置を分割して購入する事務手続き上、次年度に使用額が生じた。 全体の配分に大きな変更はなく、差額は表面分析装置の残金の支出に計上する。
|