2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the formation process of higher order structure in polysaccharide ester using synchrotron radiation X-ray
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19K20486
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| Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
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Principal Investigator |
加部 泰三 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00768864)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | 多糖類 / 多糖類エステル / カードラン / リアルタイム測定 / 高次構造 / 結晶化挙動 / 広角X線回折 / 小角X線散乱 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
β1,3グルカンはグルコースがβ1,3結合した多糖類の一種であり、微生物や菌体などによって生合成される。特に微生物が生産するカードランはβグルカンの一種である。本研究では、化学修飾により側鎖にプロピオニル基を有するカードランプロピオネート(CDPr)を取り扱う。CDPrは熱可塑性および結晶性を示すことから、結晶性バイオマスプラスチックとして期待される材料である。昨年度までで、「溶融紡糸過程における吐出ダイ直前・直後のリアルタイム観察法」のシステム改良がおこなわれた。本年度は球晶1個の解析を行うためのシステム構築を行う予定であったが、当初よりもビームタイムの確保が難しくなったことから溶融紡糸過程の測定を進めた。
本年度は、昨年度に引き続き溶融紡糸過程の結晶化観察をするための、「溶融紡糸過程における吐出ダイ直前・直後のリアルタイム観察法」の測定を行った。吐出ダイと巻き取り機の間であるエアギャップ間隔(100mm程度)で結晶化を起こしていることが明らかになったことから、巻取繊維の測定位置および巻き取り速度を変化させ、12条件(巻取り速度3条件×測定位置4条件)でWAXD測定を行った。この結果、吐出されてから巻き取られるまでの中空で、結晶化の過程を観察することが出来た。測定位置を変えた分析結果から、結晶化は分子鎖が巻き取り方向に揃った後、分子鎖軸と平行に動くことで結晶化が進行すると予想される。
「一つの球晶の観察法」の測定に関しては、測定システムのデザインと構築を進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していたよりもビームタイムの獲得が難しくなり、計画を変更した。一方で、限られたビームタイム中で実施した実験は、予想よりも多くのデータが取れたため、研究はおおむね順調に進展している。
本年度は、「溶融紡糸過程における吐出ダイ直前・直後のリアルタイム観察法」の観察を行った。繊維は巻取り中にmmオーダーで動いてしまい、測定位置が変化してしまい、回折強度の評価が不可能であった。これは、昨年度に構築したシステム(高速撮影およびX線の撮影タイミングと同期して撮影のできる高解像度X線同軸CCDカメラ、ストロボ光源)によってX線が繊維に当たっているかの判定が可能になり解決することが出来た。また、X線あたり判定が可能になったことで、ミラーによるX線の収束を適用でき、得られる回折強度の向上が認められた。
測定は巻取り位置が異なる条件(繊維が吐出されてから2，5，10，14mm)と異なる巻き取り速度(17 m/min, 35 m/min, 70 m/min)の組み合わせ(12条件)で測定を行った。この結果、巻き取り位置が下に動くにつれて、赤道線上の回折と第一層線上のわずかな回折が現れ、その後第二、第三層線上の回折が現れた。これは、分子鎖が繊維の断面方向(繊維軸に対して垂直な面)に揃って分子鎖がそろい、その後分子鎖軸に位置を整えることで結晶化したことを意味する。このことから、CDPrは溶融状態(分子鎖の重心が容易に動く状態)で外部からの力によって分子鎖が揃うと結晶化がしやすくなると考えられる。測定位置を固定し、速度を上げた場合は、巻き取り速度が速くなることで同じ位置でも早い段階で第二層線上の回折が認められた。このことから、巻き取り速度が、分子鎖をそろえる外力であることが明らかとなった。この結果は、巻き取り速度の上昇が、結晶化度および引張強度と正の相関を持つことをうまく説明できる。
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| Strategy for Future Research Activity |
「溶融紡糸過程における吐出ダイ直前・直後のリアルタイム観察法」に関しては、位置を変えた測定を再度行い、結晶化過程に結論を出す。また、得られたデータの解析を進める。
「一つの球晶の観察法」の測定に関しては、測定システムの構築を進めている。一つの球晶を観察するためには、球晶とＸ線の測定位置を完全に把握することが必要であるが、偏光像とX線を同時に撮影することは実験レイアウト的には難しい。ポリエチレンなどの場合、偏光顕微鏡の光軸とサンプルが直行していなくても球晶を観察することが可能であるが、CDPrの球晶は光軸との角度がしっかりと直行(90°)になっていないと観察されない。これを改善すべく、実験レイアウトの構築を行う。また、大きな球晶が得られる条件についても検討を行っている。同時に、偏光顕微鏡測定で得られるデータから、詳細な速度論的解析についても検討する。
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| Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため、ビームタイム確保の見通しが立たなかったため、一部計画を変更した。上記の理由に加えて、出張が難しくなり、外部研究室に赴き繊維やフィルムの力学強度を測定することが難しくなった。このことから、オフラインで測定が可能である引張試験機の購入を行った。
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