2019 Fiscal Year Research-status Report
雑草管理が駆動する草本群集の形成・維持機構:系統的構造のパターンと変化から解く
Project/Area Number |
19K20493
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松橋 彩衣子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 研究員 (20720626)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 農業生態 / 群集生態 / 草本植生 / 雑草 |
Outline of Annual Research Achievements |
雑草群集の形成・維持の仕組みを理解することは、現代における生態系への理解に繋がると同時に、環境管理における課題でもある。本研究では作物とその周辺の雑草群集の系統的構造に着目することで、農地という強い雑草管理下にある草本群集の形成・維持機構を解明することを目的とする。当該年度は、本研究の解析の基盤となる雑草情報の収集・統合を行った。国内における農地雑草に関連する情報は、これまでも文献にはなってはきたが、解析に利用可能なものは存在しない状況にある。そのため、まずは国内の農地にて出現が報告されている雑草をリストアップし、種特性、分布地域、出現農地等の情報をデータベースや文献等より収集し整備した。また、作物と雑草の関係の詳細な関係性を把握するために、国内外において主要となっている特定の強害雑草種に着目し、情報収集・予備解析を行った。収集情報の一部は総説論文としてまとめ、学術誌に投稿中である。さらに、実際に各地の除草剤試験地や生産圃場を視察し、雑草問題の地域性や農地管理による特性の違いの把握を行うと同時に、作成した雑草データに含まれうるバイアスの可能性の検討を行った。その結果から信頼性の高いデータの絞り込みを行った。その他にも、現地における雑草群集データ収集及びその効率化のため、UAVによる空撮画像の利用の試行及びGPS情報付き画像からの情報抽出等、異なる情報の入手・解析手法の検討も行った。これらより、本研究で行う解析の基盤となる情報整備を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、本研究で予定していた解析の基盤となるデータの整備をほぼ達成することができ、ほぼ予定通りに進んでいる状況にある。本研究では大量のデータを扱っていく上でデータバイアスの存在が懸念事項であったが、実際に現地の視察を複数回行うことにより、バイアスの存在が懸念されるものについては排除し、最終的により信頼性の高いデータのみを選別していくことができた。また、特に世界的に見ても特に重要性の高い強害雑草種に関しては、収集された情報から、本研究では当初予定していなかった重要な問題意識が確認されたことから、総説論文としてまとめることができた。本論文は現在学術誌にて投稿中である。これらの他に、次年度以降の解析で必要とされる情報分析・系統解析に利用するプログラミングに関する試行も進めている。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で整備したデータを基盤として、分布地域、作付等といった、様々な農地条件における雑草群集に着目して解析を進めていく。気候データ等、解析に必要な情報を適宜収集・整備し、利用していく。各雑草種及び栽培種に関しては系統情報を収集し、各農地条件における群集構造を系統関係で分析し、傾向を解析していく。得られた結果をとりまとめ、国内・国際学会にて発表を行う。また、学術論文として取りまとめる。ただし、新型コロナウイルス感染症に係る出勤・出張制限等により、研究補助員による労働力の減少、解析環境の利用制限、予定していた出張(打合せ、現地調査、国内・国際学会発表等)の取り消しが生じており、それによって研究の進捗の遅延が生じる可能性が懸念されている。解析の優先順位や手法の変更等を行って臨機応変に対処することで、全体としての本研究の遂行に支障が生じないよう工夫しながら対応していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況より、研究補助員の雇用開始時期を当初予定していたよりも遅らせた方が効率的であると判断し、翌年度分として繰り越した。 新型コロナウイルス感染症対応として、出張自粛を行ったため、当初予定していた現地視察、打合せ、及び学会発表用の旅費を翌年度分として繰り越した。
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