2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K20510
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
森田 稔 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (10756977)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 節電取組み / 高齢者 / エアコン / 省エネルギー行動 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の結果から示された高齢世帯の電力消費量の状況を基に、高齢者の節電取組みの状況について実証分析を行った。節電取組みの具体的な事例として、環境省が推奨しているエアコンに関する3つの省エネルギー行動(①「夏のエアコンの設定温度を28℃以上にする」、②「冷房や暖房は不必要につけっぱなしにしない」、③「フィルターを月に1回か2回掃除する」)について、社会人口統計変数を考慮に入れつつ、「年齢」要素がこれら節電取組みそれぞれの実施にどのような影響を与えているのかについて検証を行った。ただし、本年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、アンケート調査に協力してもらえる世帯を十分に確保することができなったため、研究代表者が過去に行ったサーベイデータを用いた。分析結果より、「夏のエアコンの設定温度を28℃以上にする」と「フィルターを月に1回か2回掃除する」の2つの節電取組みについては、年齢要素がそれら行動の実施に影響を与えていないことが明らかとなった。一方、「冷房や暖房は不必要につけっぱなしにしない」という節電取組みについては、社会人口統計変数を考慮した上でも、加齢とともに実施しなくなることが統計的に示された。エアコンの設定温度を高めにすることで被る不快さやフィルター掃除にかかる労力といった機会費用には年齢による差がない可能性がある。しかし、エアコンを細目に使用するといった日常生活での些細な節電取組みには加齢による影響があることが示された。この点は、認知心理学の分野で指摘されている加齢よる認知機能の低下により、こうした些細な節電取組みへの意識が欠如してしまったことが影響していると考えられる。以上の本年度の分析結果については、国内学会で報告し、海外ジャーナルに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から続く新型コロナウイルス感染症により、講義実施形態の大幅な変更を余儀なくされたため、研究に充てる十分な時間の確保ができなかった。さらに本研究では、Web調査から漏れてしまうような高齢者も含めた高齢世帯を調査対象とし、郵送調査法によって調査票を配布することを想定してる。そのために、高齢世帯の住所を住民基本台帳の閲覧などから入手する必要があるが、これら作業においても新型コロナウイルス感染症の影響により、行政機関への申請手続きや各機関(本学の附属高校など)への交渉に時間を要してしまった。また感染予防の観点から、新型コロナウイルス感染症後の新しい生活様式への変化を考慮した上でのプレテストも実施することができなかった。こうした事情により、分析を行う上で十分なサンプルを本年度内に確保することが困難であると判断し、アンケート調査の実施を翌年度へ繰り越すことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究の進捗状況を踏まえ、以下の内容で研究を進めていく。まず、世帯主年齢が65~74歳の二人以上(ただし同居人の中に有職者がいる場合は除く)と単身世帯を対象に、夏季(7~9月)と冬季(12~2月)の2期間でアンケート調査を実施する。対象となる高齢世帯の住所については、高崎市スポーツ課の協力の下、各種スポーツ団体に所属する中学生の保護者に対して事前調査(中学生の祖父母の住所を抽出)を6月に実施することとなっている。また、本学の附属高校に通う高校生の保護者に対しても同様の事前調査を6月に実施する。さらに、住民基本台帳の閲覧により、無作為抽出法を用いて高崎市と渋川市の高齢世帯を抽出し、同様のアンケート調査を実施する。その上で、2時点パネルデータの構築を図り、高齢世帯の電力消費と節電取組みの把握、節電に繋がる取組みにおける非価格要因について実証分析を行う。具体的には、① 高齢世帯内での電力に関する消費行動と節電取組み状況と、節電ポテンシャルと取組みの阻害要因を把握する。② 社会的規範が高齢世帯での節電取組みに与える影響を検証する。③ ナッジなどを活用し、各世帯の阻害要因に適した情報を提供することで、節電行動が促進されるのかを検証する。以上の結果を踏まえて、高齢世帯に適した節電促進政策の在り方を模索・提言する。
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Causes of Carryover |
今回の調査では、サンプル数として1500世帯(うち、500世帯は住民基本台帳より無作為抽出)を想定している。これら世帯に対して、アンケート調査に回答してもらった謝金として500円/世帯(計750000円)を想定している。住民基本台帳の閲覧費用として300円/世帯(計150000円)がかかる。さらに1500世帯に対して、6回の調査票を郵送するための費用として計1269000円(1500世帯×141円/便×6回)がかかる計算となっている。
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Research Products
(1 results)