2019 Fiscal Year Research-status Report
トルコの政教関係の変動と国内外の市民社会の相互関係に関する研究
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19K20515
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| Research Institution | Chiba University |
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Principal Investigator |
幸加木 文 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 特任研究員 (80794312)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | トルコ / 市民社会 / 政教関係 / 社会的分断 / スカーフ |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公正発展党（AKP）政権期のトルコの世俗化／宗教化の様相，国内外の市民社会組織（CSO）及び個人の信仰の在り方の多様性，その多様性への社会的許容度，そして社会的分断の在りよう及びその変容を実証的に解明することを目的とする。政策や政治情勢が市民社会に及ぼす影響を，政治分析のみならず，未だ研究が手薄なトルコの市民社会の観点から分析する点に意義及び重要性が見いだせる。
初年度にあたる2019年度は，資料の収集，読解を進める一方，６月に開催された研究会にて，主として2010年代のトルコの市民社会の動向に関して発表を行った。同時に，トルコ国内外の世俗派，宗教保守派，無神論者等のCSO及び個人から調査対象を選定し，米国及びトルコにて予備調査を行った。
まず，８月末から９月初旬までの12日間で，ワシントンD.C.，ニューヨーク，バッファロー，シカゴの４カ所にて聞き取り調査を実施し，継続的調査に向けた今後の方法，方針について意見交換を行った。この調査の一部を，12月に開催された研究会にて発表した。
次に，2020年３月中旬の６日間で，トルコ・イスタンブルにて予備調査を実施した。同調査は，同国で新型コロナウイルスの感染者が発生し始めた時期に当たり，その影響で宗教保守派CSOの代表者との面会は実現しなかった。しかし，無神論者のCSO代表に対する聞き取り調査を実施し，継続的調査にも前向きな回答を得た。
さらに，トルコにおける世俗化の様相の一つである無神論者の増加傾向を検討するため，スカーフ着用に葛藤するトルコ人女性たちの言説を集めたウェブサイト上の言説を分析した。この分析の一部を，2020年３月にエジプトで開催された国際セミナーにて発表した。なお，イスラーム・ジェンダー学に関する書籍（2020年３月刊）に，女性をめぐる問題へのトルコの市民社会における取り組みについて１章を寄稿した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる2019年度は，関連資料の収集，読解を進める一方，６月に開催された研究会にて，2013年の大規模な反政府抗議運動と2016年のクーデタ未遂事件を手がかりに，2010年代のトルコの市民社会の動向について発表した。この発表の一部を，イスラーム・ジェンダー学に関する書籍（2020年３月刊）に，女性をめぐる問題へのトルコの市民社会における取り組みに関する１章として寄稿した。
また，トルコ国内外の世俗派，宗教保守派，無神論者等のCSO及び個人から調査対象を選定し，それぞれに対して活動実態の聞き取り調査や参与観察，資料収集等の現地調査を行うための予備調査を米国及びトルコにて行った。まず，2019年８月29日から９月９日までの12日間で，ワシントンD.C.，ニューヨーク，バッファロー，シカゴの４カ所にて聞き取り調査を実施した。また，継続的調査に向けた今後の方法，方針について意見交換を行った。この調査の一部を，2019年12月に開催された研究会にて発表し，参加者との質疑応答から有益な示唆を得た。
次に，2020年３月10日から15日の６日間で，トルコ・イスタンブルにて事前調査を実施した。同調査は，トルコで新型コロナウイルスの感染者が発生し始めた時期に当たり，その影響で，予定していた宗教保守派CSOの代表者との面会は実現しなかった。だが、無神論者のCSOにおいて聞き取り調査を実施し，継続的調査についても前向きな回答を得た。併せて，今後の研究推進のために重要な現地資料を収集した。
さらに，トルコにおける世俗化の様相の一つである無神論者の増加傾向を検討するため，スカーフ着用の強制に葛藤する女性たちの言説を集めたウェブサイト上の言説を分析し，その一部を，2020年３月にエジプトで開催された国際セミナーにて発表した。
以上の通り，初年度に予定していた計画に鑑みて，順調に実施することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究の推進方策については，引き続き，本研究に関連する文献・資料収集を行い，読解を進めてゆく。同時に，2019年の調査結果及び口頭発表をまとめ，学会発表ないし雑誌等にて発表することに注力する。なお，本研究成果の発表のため発表申し込みをしていた日本中東学会第36回年次大会は，新型コロナウイルス感染拡大防止により中止となったため，代替の発表方法が決定し次第，対応する予定である。
2020年度の現地調査については，新型コロナウイルス拡散の趨勢に大きく左右され実施が困難になる可能性があるが，年度後半に実施できるよう，引き続きトルコ国内外の世俗派，宗教保守派，無神論者等の市民社会組織（CSO）及び個人から調査対象を選定し，調査先のコンタクトパーソンとの連絡，調整，アンケート作成を含めた調査準備を行う。
年度内の現地調査が不可能になった場合には，2020年３月の予備調査の際に，今後のオンラインによる調査の可能性を模索してきたため，その実現に向けて行動することする。さらに，新型コロナウイルスの影響以外に，今後のトルコの政治及び外交情勢によっては，トルコのCSOや個人への調査が困難になる可能性も否定できないため，インフォーマントに悪影響が及ばないことを最大限に考慮しつつ，臨機応変に研究計画の変更を検討することとする。
また，トルコの世俗化傾向、特に無神論者の増加傾向を検討するため、スカーフ着用をめぐる当事者であるトルコ人女性たちのオンライン上の言説分析を2019年度より開始しており，その読解，分析を2020年度においても鋭意進めてゆく。併せて，本研究成果を書籍としてまとめて出版するため，随時執筆を進める。
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| Causes of Carryover |
次年度使用額40円が生じた理由は、残額を使い切れる物品がなかったためであり、次年度の助成金と合わせて文房具等の物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)
