2021 Fiscal Year Research-status Report
西アフリカにおけるイスラーム系移民の危機回避に関する人類学的研究
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19K20517
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
桐越 仁美 国士舘大学, 文学部, 講師 (70793157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人口移動 / 移住形態 / ガーナ北部 / アッパーウェスト州 / チェーンミグレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、西アフリカ内陸乾燥地域からの人口流入が急速に進むなか、ガーナにおいては移民と受入社会とのあいだで紛争が生じていない点に着目し、なぜ紛争が生じていないのかの背景を人びとの取り組みから明らかにすることを目的としている。今年度の研究では、おもに2010年人口センサスと2014年に実施したフィールドワークの結果から分析をおこなった。ガーナ北部地域(2010年現在におけるアッパーウェスト州、アッパーイースト州、ノーザン州)からガーナ南部地域への人口移動の傾向を分析した結果、アッパーウェスト州の出身者はヤム生産に適した植生移行帯(ブロン・アハフォ州北西部)に集中的に移住する傾向があり、アッパーイースト州の出身者はガーナ南西部の内陸地域、ノーザン州の出身者はブロン・アハフォ州北東部に移住する傾向がみられた。この結果からガーナ北部の人びとの移動は地縁(出身地)によるチェーンミグレーションによる可能性が示唆された。また、アッパーウェスト州の人びとの移動に着目して分析を行った結果、家族の一部を南部地域に送り込み、そこに住まわせることで出稼ぎ労働(季節労働)の拠点形成をおこなう傾向が明らかとなった。南部地域における拠点形成の際に送り出されるのは世帯のなかの一核家族であり、それ以上は移住させない傾向があることが判明した。南部地域への急速な人口流入は紛争の要因にもなりうるが、急速な人口流入が抑制され、紛争が回避できている要因の一つに、この移住形態が含まれる可能性が示唆された。この成果は、日本語論文1本と英語論文1本によって公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により現地における調査が実施できていない状況であるが、過去のデータや文献資料、政府が刊行している2010年人口センサスのデータを用いた分析をおこなうことで進捗はみられている。研究成果として国際シンポジウムで発表したほか、論文を2本発表できていることから、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
ワクチン接種等で新型コロナウイルスによる制限が解除されてきたことから、今後はこれまで実施できなかった現地調査を実施する予定である。現地調査では、移民世帯および受入側世帯への聞き取りを実施し、おもにガバナンスの浸透状況とともに農作物生産や商業活動の状況についても詳細に調べることとする。また、移動が制限されていたコロナ禍における移民コミュニティのネットワークについても調査を実施する予定である。ここで得られた調査結果をもとに、秋に予定されている人文地理学会において、ガーナにおける人びとの南北移動とガバナンスについての発表をおこなうとともに、現代におけるフロンティアに関する分担執筆の書籍に寄稿する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大にともなう移動制限により現地調査が実施できなかったことで旅費として使用する予定であった助成金の執行ができなかったため、当初予定していた使用額からの変更が生じた。次年度使用額とあわせた助成金は、海外渡航費および現地における資料収集によって使用する予定である。
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Research Products
(5 results)