2022 Fiscal Year Research-status Report
西アフリカにおけるイスラーム系移民の危機回避に関する人類学的研究
Project/Area Number |
19K20517
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
桐越 仁美 国士舘大学, 文学部, 講師 (70793157)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 人口移動 / 農地獲得 / 農業生産 / 植生移行帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、西アフリカ内陸乾燥地域からの人口流入が急速に進むなか、ガーナにおいては移民と受入社会とのあいだで紛争が生じていない点に着目し、紛争が生じていない背景を人びとの取り組みから明らかにすることを目的としている。今年度の研究では、ガーナ南部の植生移行帯への人口流入および農地取得の実態についての現地調査・分析を実施した。調査の結果、植生移行帯には多くの移民が流入しており、彼らの多くがサバンナ地域からの移民であった。移民は地域住民から農地を取得しており、いまやこの地域の農業生産者の多くが移民であるという実情が明らかとなった。1960年代はナイジェリアからの移民が農業生産に従事していたが、それが1980年代を境にガーナ北部の人びとに置き換わり、現在では穀物や根塊類などの生産を担う主要な労働力となっている。これまでは移民の農地は年単位での貸借によって確保されていたが、現在は樹木作物を植えることにより成立する農地分割によって移民であっても所有権を取得できるようになっている。しかし、ここ数年は土地法に則った貸付の件数が増加しつつある。現状において地元民は農業生産の主力でもある移民を排斥する意向はなく、共存を望んでいる状況であるが、土地の管理をめぐる移民と地元民の対立は各地で報告されているため、今後もこの地域の動態を観察する必要があると考えられる。なお、この研究成果は、日本語論文1本によって公表される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を再開することができ、これまで現地で確認できなかった事象の確認ができるようになったが、現地で新型コロナウィルスに感染したことで、当初予定していた調査は実施できなかった。しかし、急遽予定を変更し、植生移行帯をターゲットにした調査を実施し、その結果を用いて論文の発表もできていることから、概ね順調に進んでいると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度も現地調査の実施が可能であるため、現地調査を実施する予定である。現地調査では、移民世帯および受入側世帯への聞き取りを実施し、おもにガバナンスの浸透状況とともに農作物生産や商業活動の状況についても詳細に調べることとする。また、移動が制限されていたコロナ禍における移民コミュニティのネットワークについても調査を実施する予定である。ここで得られた調査結果をもとに、秋に予定されている人文地理学会において、ガーナにおける人びとの南北移動とガバナンスについての発表をおこなう予定である。
|
Causes of Carryover |
予定していた物品の購入が先送りになったため。今年度はおもに現地調査費と現地における資料請求に予算を配分する予定である。
|
Research Products
(6 results)
-
-
-
[Book] 地理学事典2023
Author(s)
公益社団法人日本地理学会
Total Pages
842
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4-621-30793-9
-
-
-