2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of factors promoting acceptance of novel mosquito control technologies by residents in areas with mosquito-borne infectious diseases
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19K20520
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 みな子 京都大学, 次世代研究創成ユニット, 特定教授 (70636646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蚊防除 / 地域住民 / サイエンスコミュニケーション / シンガポール / 社会実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度にはシンガポール国家環境庁本部の研究協力者を通じて、11月に開催された地域住民を対象とした政府主催による住民教育イベントにて、参与観察、現地資料の収集、聞き取り調査を行った。この毎年行われるイベントは、シンガポールが国をあげて取り組む水、ゴミ、エネルギー等、環境に関する諸問題について、住民の知識を深め、一人一人の行動を誘発しながら協力を得る場としての役割も果たしている。媒介蚊コントロール(蚊防除)についても国家環境庁が担当するため、このイベントでは、ヤブカ属が媒介するデングウイルス感染症、ジカウイルス感染症に関する予防が扱われる。今回は南東地区において開催セレモニー及び主要なイベントが行われ、ほぼ平行して南西地区においても住民教育活動が行われたため、両地区において3日間にわたって調査した。その結果、大臣、市長、国会議員がこうした取組を支持していることを言動と行動により示そうとしている様子がみられ、住民からの聞き取り調査では議員と住民の距離感の近さが住民の協力に影響を及ぼしていると示唆される意見が得られた。行政によるサイエンスコミュニケーションを用いたアウトリーチ内容に関する情報も得ることができた。12月に短期滞在の機会を得て、これら2回の現地訪問中に国家環境庁、コミュニティ組織及び国立大学の研究協力者6名全てと打ち合わせることができた。 国内での感染症会議、学会における情報収集を3回行い、研究者コミュニティと意見交換の機会の得た。 文献調査は、学術論文、収集した現地資料に加えて、一部オンライン資料等を活用し進めている。これまでに、2016年以降のボルバキア感染オス蚊の住宅地における放虫実験開始までの当局による地域住民への働きかけ、媒介蚊コントロールとしてのボルバキア技術のシンガポールにおける科学的エビデンスに関する情報が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度にはシンガポールにおける臨地調査を2回計画していた。1回目として8月にボルバキア技術の社会実装に関する聞き取り調査および現地資料の収集を、2回目として11月に政府イベントにおける参与観察および情報収集を予定していた。5月に研究代表者の昇任を伴う学内人事異動があり、想定外の用務過多のため8月の臨地調査をやむを得ず2020年3月に延期したため、この時点で研究にやや遅れが生じていた。 11月の臨地調査は予定どおり完了したものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという、当初予期することができなかった事態の発生により、3月に延期した臨地調査を再度、次年度に繰り越す必要が生じた。また、国家環境庁の研究協力者3名が同感染症アウトブレークにより多忙を極めていることもあり、臨地調査の代わりとしてのメール等による情報収集についても実行が難しい状況であり、研究が遅れている。 一方、コミュニティ組織の研究協力者からは、デングウイルス感染症及び蚊防除に関する現地情報が定期的に得られ、こうした情報収集及び分析は順調に継続できている。 臨地調査で得る予定であった現地資料以外の文献調査については、計画どおりに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年5月現在、新型コロナウイルス感染症の世界的流行は終息しておらず、シンガポールにおいては建設業に従事する外国人労働者の複数の寮においてクラスターが発生するとともに、医療従事者および市中感染症例の報告が行われている。そのため、シンガポールへの渡航および現地における調査が行える時期についての見通しを立てることが難しい状況である。しかし、できる限り早いタイミングで臨地調査を行い、研究の遅れを取り戻したいと考えている。 臨地調査が行えない場合、自ずと聞き取り調査および参与観察が実行できないため、当面の間学術論文や公表資料による文献調査について、2020年度に計画していた内容に加えて2021年度分を前倒しで行い、研究の進捗を図りたい。
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Causes of Carryover |
臨地調査2回目の延期による旅費および現地資料の収集の遅延による資料整理に係る謝金の未執行により、次年度に一部予算を繰り越した。2020年度に延期した臨地調査の遂行により、予算が当初の計画に沿って執行できる見込みである。
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Research Products
(1 results)