2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of factors promoting acceptance of novel mosquito control technologies by residents in areas with mosquito-borne infectious diseases
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19K20520
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 みな子 (ヨシカワジェン) 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携教授 (70636646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蚊防除 / 地域住民 / サイエンスコミュニケーション / シンガポール / 社会実装 / 観光地 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年10月に2年ぶりに現地参加した学会では、蚊媒介性感染症をはじめとした国内外における症例報告、予防に関する取り組み等に関する情報収集および研究者間の情報交換を行った。この2年あまり一般社会の興味・関心が新型コロナウイルスの伝播に向けられ、学会構成員の研究対象も当該ウイルスに関するものへの傾斜傾向がみられ、国外における研究調査の実施が困難であったことから、蚊媒介性感染症に関する最新の情報量は低下していたと言わざるを得ない。東南アジア地域も例外にもれず、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う出入国の規制より、本研究にかかる現地調査は2020年3月以降実行できない状況が続いていた。12月になりようやく臨地研究が行える状況が整い、シンガポール環境庁をはじめとした研究協力者から情報収集を行うとともに、複数の観光スポットにおいて蚊の出現状況、発生源の有無を観察した。コロナ以前にシンガポールにおいて例年数回にわたって大規模に行われていた公衆衛生教育のイベント・キャンペーンは、12月時点ではその頻度が低下し、規模も著しく縮小されていることを確認した。このことは、以前のように行政・サイエンティストと地域住民との交流といった活動が十分行われていないことを示唆しており、これによる情報普及あるいは地域住民による蚊防除の状況について、何らかの影響があると推察される。たとえば、シンガポールではボルバキア技術による蚊防除を小規模地域において試験的に行われてきたが、国全域のデング熱症例数が増加していることから、この技術に否定的な見解を示す地域住民の声が聞かれた。シンガポール同様に観光地であるタイのバンコクにおいては、市街における予防対策の参与観察および文献調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度の後半になってようやく東南アジア地域において現地調査を再開することができたものの、調査対象地域であるシンガポールにおいて、政府が主催するイベントの機会が減少し、規模が縮小されるなど、当初予想できなかった状況が生じている。この影響は大きく、地域住民からの聞き取り調査ができなかったばかりか、参与観察できる機会も大幅に減少した。Withコロナ時代の臨地研究の方法は大きな変更が必要となっていることから、今後の本研究の方法に関して検討が必要となっている。また、令和2年度および3年度は就業時間内の研究活動が認められなかったため、収集データの考察や学会参加等の研究活動に遅れが生じた。こうしたことから、研究期間の延長(1年間)を申請した。1年間の遅れが生じるものの、令和5年度内に、当初の研究目的の達成が可能となると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
予防対策としての新たな蚊防除技術の社会実装が地域住民にどう受容され、その意思決定に影響を与えた要因の解明および制度設計について、今年度内にこれまでに収集した情報を総括する。新型コロナウイルス感染症の影響により、調査対象国に約2年半以上渡航できなかったため、地域住民からの聞き取り調査が十分行えていない。以前のような対面による聞き取り調査の実行が容易でないため、補完するべくこれまでにも行ってきている参与観察、文献調査、他地域の比較考察を続ける。6~12月の間に1回以上現地調査を行い、さらなる情報を収集し、本研究の問いへの答えをまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により現地調査を行うための渡航機会が減少し、研究方法も対面調査から文献調査・参与観察等に変更が生じた。これにより令和4年度までの旅費、人件費・謝金の支出が減少する一方、文献購入およびデータ収集のための利用料が増加した。当初の研究目的を達成するために研究期間を1年間延長しており、最終年度となる令和5年度にはデータ使用料、現地調査および学会発表・情報収集による旅費が必要となっており、順調に研究費を執行できる予定である。
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Research Products
(1 results)