2019 Fiscal Year Research-status Report
アフガニスタンにおける国民統合政策の変容に見るエスニシティ間対立構造の分析
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19K20529
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
登利谷 正人 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 研究員 (90711755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフガニスタン / パキスタン / パシュトゥーン / パシュトー語 / エスニシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開始初年ということで、本研究課題において必須となる1930年代以降の時代を中心としたアフガニスタンにおける「パシュトゥーン化政策」の分析に必要な文献、文書を収集するため、パキスタンへの2度の資料調査を実施した。調査においては、研究に必要なパシュトー語・ウルドゥー語資料の調査・収集を行った。特に、アフガニスタンの多数派エスニシティと位置づけられているパシュトゥーンの位置付けについて確認するために必要なパシュトー語文献の収集と、パキスタン側から見たアフガニスタン近現代政治史に関連する文献の調査を中心に活動を実施した。 同時に、これまでに収集したイギリス国立公文書館、および大英図書館所蔵資料のうち、第二次世界大戦後のパキスタン建国前後に生じたアフガニスタンとイギリスとのパシュトゥーン居住地域をめぐる問題について記した資料の分析を進めた。イギリス国立公文書館所蔵文書においては、パキスタン建国直前から1940年代末に至るまでの、アフガニスタン側によるパシュトゥーン居住地域に対する見方が外交記録から明らかとなった。具体的には、アフガニスタン側イギリスに対して、現在のパキスタン領内におけるパシュトゥーン居住地域をアフガニスタン側が領有すべきとの見解を直接提示し、細かな交渉を実施していた点が明らかとなった。また、大英図書館所蔵資料からは、イギリスによりアフガニスタンとインド間を季節移動しつつ、遠隔地交易に従事してきたパシュトゥーンの遊牧集団に対する対処の状況が記されていることが判明した。これらの資料分析を進めたが、次年度以降もさらに資料分析を進め、より詳細な調査を進め、状況を整理する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パキスタンでの2度の海外調査を実施することで、本研究に必要な基礎文献の収集を実施することができた。また同時に、パキスタンでの関連する研究者との意見交換を実施することを通じて、今後の研究活動の道筋をつけることもできた。さらに、すでに収集済みのイギリス所蔵の一次資料の分析を進めることで、アフガニスタンが現在のパキスタン領内のパシュトゥーン居住地域に対してどのような外交交渉を行っていたのかという点について具体的な点を明らかにできることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も可能なかぎりパキスタン、イギリスでの資料調査と両国の関係する研究者との意見交換を実施し、合わせて調査・取集した資料の分析を進めていく。 具体的には、1940年代~1960年代にかけてのアフガニスタンの国民統合政策におけるパシュトゥーン の位置付けについて、パキスタンと比較しつつ検討を進める。
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Causes of Carryover |
本来であれば本研究においてイギリス調査を予定していたが、他の研究資金により調査を実施した際に、合わせて本研究課題に関連する調査も実施した。このため、今年度使用金額に差額が生じた。今後の使用計画としては、次年度以降にパキスタン、もしくはイギリスへの在外調査の回数、もしくは調査日数を増やすことで本研究計画の進展を図りたい。
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Research Products
(5 results)