2021 Fiscal Year Research-status Report
アフガニスタンにおける国民統合政策の変容に見るエスニシティ間対立構造の分析
Project/Area Number |
19K20529
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
登利谷 正人 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (90711755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフガニスタン / パキスタン / パシュトゥーン / ターリバーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は1980年代から90年代のアフガニスタン政府のエスニシティ政策の変遷を、パシュトゥーンを軸に分析すること中心に研究を実施した。前年度以前から延期してきた海外調査の実施が不可能な状況であることを考慮して、現地調査に代わり研究に必要な文献資料を直接購入し、その分析を中心に研究活動を実施した。具体的には、アフガニスタンからパシュトー語の文献をはじめとする関連資料を多く購入し、その中でも文芸を通したエスニシティ政策やターリバーン関連の文献の分析を中心に研究を実施した。特に、1980年代の共産主義政権下におけるパシュトー文芸活動と国民統合との関係に関する研究資料の分析、および1990年代のアフガニスタン政治に関するパシュトー語の一次資料の分析を実施した。共産主義政権下での言語・文芸活動の国家機関として再編されたアフガニスタン科学アカデミーの全体的概要と文芸活動の全体像を把握するとともに、7巻本として近年刊行された『パシュトー文学者事典』を用いて、関連作品・作家の情報をまとめた。加えて、ターリバーン成立前後から幹部の近くに仕えた人物のパシュトー語自伝、およびパキスタンの外交官でアフガニスタンで領事や大使を歴任した人物のウルドゥー語回想録などを分析し、ターリバーン成立時の状況や政治動態の全体像をまとめた。これらの作業を通じて、アフガニスタンにおけるエスニシティ分断の根源となる、パシュトゥーンによる国民統合意識について今後さらに分析するための基盤を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来実施する予定であったパキスタン、およびイギリスなどでの海外調査がコロナウイルスの感染拡大により、完全に実施が不可能な状況となったことで、当初の研究計画とは異なる状況となってしまったため、
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大により実施できていない海外調査を実施可能な場合には、パキスタン、およびイギリスへの調査を実施し、当初の研究計画の遂行に努めたい。ただ、海外調査が困難な場合には、これまで収集した文献資料の分析に加えて、アフガニスタンやパキスタンから関連するパシュトー語やウルドゥー語の文献を直接購入し、それらの諸文献の分析を中心に研究を進めることで、海外調査が不可能な場合でもある程度の研究計画遂行が可能であるため、状況に応じて適切な形で研究を推進していく方針である。
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Causes of Carryover |
前年度以前から当初予定していた海外調査が実施できなかったため、繰越金が多額となっていた。このため、研究計画を変更の上、海外から研究関連資料を購入したが、当初研究計画との齟齬のため、次年度使用額が生じてしまった。
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