2022 Fiscal Year Annual Research Report
アフガニスタンにおける国民統合政策の変容に見るエスニシティ間対立構造の分析
Project/Area Number |
19K20529
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
登利谷 正人 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (90711755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフガニスタン / パシュトゥーン / パキスタン / ターリバーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究機関の最終年度であったが、コロナ禍による海外調査の制限が緩和されたため、パキスタンでの資料調査・収集を実施した。9月に一度目の調査を実施予定であったが、渡航直前にパキスタンで大洪水が発生したため、調査を直前に取りやめざるを得なかったが、3月にパキスタンでの資料収集と調査、およびその分析を実施した。特に、アフガニスタンに関連するウルドゥー語とパシュトー語の文献資料収集と分析を実施した。これに加えて、これまでに収集した一次資料の分析を進め、特にアフガニスタン関連の一次資料文献から同国のエスニシティ対立構造について、ターリバーンをめぐる問題、およびパシュトゥーンというエスニシティ集団を軸とした近現代政治史という大きな枠組みの観点からの分析結果をまとめた。ターリバーンについては、関係者などが記したパシュトー語文献の分析結果をまとめ、重要人物個人の状況と2001年に崩壊した前政権における統治状況について再検討を行った。パシュトゥーンを取り巻く歴史的背景については、20世紀中盤に高揚した「パシュトゥニスターン運動」について、同時の文芸誌や刊行物などを軸にその状況と、アフガニスタン・パキスタン両国の対応について検討を行った。しかし、この点については、コロナ禍での資料収集が十分に行えなかったこともあり、さらに今後当時発行された新聞資料などの分析を加えて継続的に研究していく必要がある。 以上の研究を通じて、研究期間全体において、アフガニスタンにおけるエスニシティ対立構造を多数派のパシュトゥーンの状況を一次資料の分析を通じて、ある程度解明することができた。しかし、さらにアフガニスタン・パキスタン間での外交や人的交流を含めた考察、およびアフガニスタンにおける非パシュトゥーンの政治活動についての分析を加えた、より包括的分析が今後必要になるという点も明らかとなった。
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