2019 Fiscal Year Research-status Report
Universalism of the Nordic Welfare System: Focusing on the Relations between Party Politics and Social Policy in Finland
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19K20532
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柴山 由理子 東海大学, 文化社会学部, 講師 (40824868)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィンランド / 社会政策 / 国民年金機構(Kela) / 普遍主義 / 農民政党 / 社会民主主義レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主要な業績として国民年金機構(Kela)とフィンランドの農民政党(中央党および前身の農民同盟)の関係について北ヨーロッパ学会で11月に発表し、同内容を「北ヨーロッパ研究」16巻に論文として投稿したことが挙げられる。これまで日本では詳しく言及されてこなかったKelaについての研究を発表し、Kelaへの農民政党との深い関りが、フィンランドの社会政策の特徴となっているとともに「北欧モデル」の多様性を示唆する可能性について論じた。また、2019年のフィンランド議会選挙の分析を行い、9月に日本フィンランド協会の定例会での報告を行った。関連して内容について12月に東京新聞および選挙ドットコムからの取材を受けた。 調査のため8月末から9月上旬、12月、3月の3回フィンランドに訪問した。8月~9月の調査では、社会民主党や中央党をはじめとした主要政党のオフィスに訪問し選挙結果および各政党の社会政策への見解について聞き取り調査を行うとともに、2020年度の研究で取り組む予定の年金制度の研究の準備として年金保障センターでの聞き取り調査を行った。12月の調査では、2020年度に進める中央党のイデオロギーについての資料を収集し、ヘルシンキ新聞社の政治記者への聞き取り調査を行った。 2020年3月の調査では、中央党のイデオロギーの研究に関する聞き取り調査、農民同盟創設者サンテリ・アルキオの文献収集、フィンランド政治学会への参加(タンペレ大学開催)、シンクタンクDemos Helsinkiの共同創設者アレクシ・ネウヴォネン氏とフィンランドにおける新しい社会政策の展開についての共同研究の打ち合わせを行った。Demos Helsinkiが主導する国際的イベントUntitledのキュリエーターの一人に選出され、新しい社会政策についての議論を進めていくことが決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね研究は順調に進んでいるが、2019年度に予定していたフィンランドのポピュリズム政党の研究は大きな進捗がなかった。これは研究の中心テーマであるフィンランドの社会政策およびそれに大きな影響を与えた中央党についての研究に集中し、2020年度に執筆を予定している論文の準備を優先させたためである。今後、研究テーマの優先順位を見極めながら、フィンランドの政党政治の研究の一つとして、同テーマの研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と同様、2020年度も①フィンランドの政党政治に関する研究、②フィンランドの政党政治の社会政策への影響、③フィンランドの社会政策の特徴と北欧型 普遍主義の再考、④ポスト工業化社会の社会政策の議論を柱に研究を進めていく。 2020年度は、農民政党(中央党および前身の農民同盟)のイデオロギーに関する論文の投稿(①および②)、北欧型普遍主義がフィンランドの新しい社会政策にどのように埋め込まれているかについて考察する研究(③)、フィンランドのベーシックインカム社会実験についての分析の海外論文への投稿(②、③および④)を中心に研究を行いたいと考えている。またフィンランドの政党政治に関する書籍の翻訳を始めたいと考えている。現在進行している社会保障改革の動向についても注視する。フィンランドでの調査は新型コロナウィルスの状況を見ながら可能であれば1~2回行いたい。また積極的に他の研究者との研究会や勉強会の機会を創出していきたいと考えている(遠隔も含む)。また国際的な学会への所属や北欧における政治学研究の研究者とのネットワークを構築していきたいと考えている。 2021年度は、フィンランドの年金制度および社会保険制度に関する研究(②および③)、フィンランドの政党政治と社会政策の関係性(②)、フィンランドの社会政策の 特徴(③)と北欧福祉国家の普遍主義の再考に関しての研究を進めていく。フィンランドの政党政治についての研究成果発表を行いたい。フィンランドでの調査(2~3回)を予定している。2022年度は、フィンランドの社会政策についての研究成果発表を行いたい。 毎年度、文献調査、訪問調査、学会への参加や発表、紀要への投稿、研究会の開催や参加、翻訳機会の検討を行いながら、3年目および4年目で研究の成果報告を行いたい。
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Causes of Carryover |
2019年は130万円の支出を予定していたが、旅費(航空券代や宿泊費など)や物品購入費などの支出が当初の予定より約20万円少なかった。この金額を2020年度に繰り越し、旅費や物品購入費などのほか翻訳や招聘などの支出に充てていく予定である。ただし2020年度は新型コロナウィルスの影響でフィンランドへの調査の回数が減る恐れがあることから、使用額の合計額は増やさず、2019年度の残高(差引額)の繰り越しを含めて当初予算額の130万円とするため差額が生じた。
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Remarks |
共同研究を行っているシンクタンクDemos Helsinkiが作成したプロジェクト用「Untitled」ホームページ。提携パートナーとして所属校の東海大学が記載されている。
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Research Products
(6 results)