2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K20539
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 明子 (村上明子) 北海道大学, 経済学研究院, 研究員 (50735826)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イラン / 女性 / エンパワメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もコロナ禍の影響のため現地調査を見送り、文献調査とオンラインベースでの議論を進めた。 当初の計画では「地方政府」、「女性起業家・個人事業主」、「NGO」という3つのアクターに注目してそれぞれの活動とその相互作用を考察する予定だったが、特に地方政府に関する情報収集は困難となった。そこで分析視角の調整を図り、全国レベルの官民連携型女性起業家支援キャンペーンである「制裁世代の女性たち」プロジェクトに関する情報収集を進めた。このキャンペーンの具体的内容として、オンライン・ワークショップの開催、資金調達情報の紹介、起業家コミュニティの育成のためのSNSを通じた認知向上活動など、コロナ禍への対応も盛り込んだ取り組みが幅広い協力主体のもと進められている様子を確認した。これらに加えて、昨年度に議論した「ICTを活用した女性の経済的エンパワメント」についても、論点の整理を行った。以上の新たな動きについて2021年7月に国際ワークショップを行い、そこで得た知見を基に昨年度執筆した“Economic Empowerment of Women through ICT Utilization: conclusions from Interviews Iran and Japan”の加筆修正を行った。 また、本計画の全体像の再検討に取り組んだ。今年度はイランのマクロ開発計画と女性起業家支援策の関係について構造整理を行い、国内のイラン研究者、中東研究者との意見交換を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
依然として現地調査が困難な状況が続く中、現地の状況も刻一刻と変化している。 感染症の影響によって現地でも経済活動の見直し・再編が進む一方で、国際的な観光客の売れ入れ再開が進むなど、感染症対策の緩和も本格化しつつある。また核合意の再建交渉など国際環境の変化も注目される。以上を踏まえて、今年度も研究計画の大幅な見直しを行った。 また、イランの新大統領就任に伴い、行政側の関係者の顔ぶれが変わった。結果として、現地関係者との情報交換が一時停滞することとなった。 このように、研究体制の再整備や課題の再整理に時間を要しているが、関係者との情報交換や議論は着実に進んでいる。これまでの現地調査内容を活かしつつ、新たな潮流について多角的な観点から検討しており、現在生じている研究の遅れは取り戻せるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、公刊資料の整理やオンラインベースでの情報収集を中心とした活動になると考えられるが、現地調査の環境も整いつつある。これまで注目してきた「ICTの活用」や「制裁時代の女性たち」キャンペーンについて、現地調査を行えるよう関係各所に働きかけを進めていく。 なお、当初の予定では調査対象の地方都市として①イスファハーン州イスファハーン市、②同州カーシャーン市、③ファールス州シーラーズ市、④アルダビール州アルダビール市(初年度に①・②で調査を実施)を予定していたが、時間的制約や関係者とのこれまでのやりとり等を考慮してカーシャーン市にフォーカスして準備を進めていきたい。 また、本計画全体の成果をとりまとめる準備も進めていく。差し当たっては、科研費基盤研究(A)「イスラーム・ジェンダー学と現代的課題に関する応用的・実践的研究」の出版プロジェクトを通じて、本計画で得た知見を広く共有することを目指している。なお、とりまとめた成果は英訳して、イランの関係者とも共有する予定だ。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大が長引いているため、今年度も現地調査や出張を見送ることとなった。また、今年度使用した資料の大半がイラン統計センターやイラン中央銀行など公的機関の発刊資料であったため、文献収集にもあまり費用が生じなかった。以上により、予定していた費用の大半が未使用となり、次年度使用額が生じた。 今年度の調査実施について、現地では国外からの観光客の受け入れが進むなど感染症対策に伴う入国制限は緩和されつつある。現地調査の再開については未知数の部分が大きいが、関係者との連携を密にしながら準備を進めていく。 他方で公刊資料の整理・分析やオンライン・ベースでのやり取りにも、引き続き努めていく。この過程において、多様な主体とのやり取りや各種資料の整理・翻訳内容の確認など、ペルシャ語話者のサポートを仰ぐ可能性が高い。調査資料の入手や整理のために、助成金を活用していく。なお、これまでの成果をとりまとめて英訳し、国外の関係者との共有を目指しており、助成金はその費用としても活用する予定だ。 本研究の目的を達成しその成果を広く共有できるよう、可能な方策を模索していきたい。
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