2020 Fiscal Year Research-status Report
民主化期インドネシアの地方王権ネットワークに関する人類学的研究
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19K20544
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西島 薫 京都大学, スーパーグローバルコース人文社会科学系ユニット, 特定助教 (30838793)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インドネシア / 地方王権 / 民主化・分権化 / ダヤック人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は民主化期インドネシアの地方社会で台頭する王と王を取り巻く人々の紐帯の歴史的変遷および現在の属人的な関係の仔細な分析から、地方王権の今日的な動態を明らかにすることが目的である。本研究課題の主な対象は西カリマンタン州のダヤック人の神聖王である。 本研究課題では現地調査によって質的データを収集することが重要な課題となる。ただし、2020年度は新型コロナウィルス拡大の影響により、現地調査が実施出来ない状況だった。また現地のインターネット環境が十分に整っていないことや現地のインフォーマントの移動が制限された状況にあるため、オンライン上での質的データの収集も困難だった。本年度は文献調査を主軸に据え、以下の3点について研究を実施した。①19世紀末から20世紀前半までの西部カリマンタンに関する文献の渉猟。具体的にはオランダ植民地期の報告や資料を渉猟した、②アフリカ、スマトラやスラウェシ、カリマンタンなどのインドネシアの各地域、オセアニアそして日本に関する人類学的研究や歴史研究との比較研究。具体的には、神聖王の位置づけに関する比較研究をおこなった。③慣習地の問題に関するニュース記事の分析。具体的には、ニュース記事を渉猟し、渡航が出来ない期間の現地の神聖王に関する動向について分析をおこなった。本研究課題の研究活動の成果については、査読論文:「ダヤック人祭司王「復活」の歴史的経緯-南西カリマンタンにおけるウルアイ王の事例にもとづいた考察-」『アジア・アフリカ地域研究(掲載決定済)』、口頭発表:日本文化人類学会第54回研究大会(発表タイトル「西部カリマンタンにおける地方政治と神器奉戴共同体のもつれあい」、オンライン開催 )および第51回日本インドネシア学会大会(発表タイトル「カリマンタンの「無力」な祭司王に関する一考察」、オンライン開催)として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由としては、以下の理由が挙げられる。本研究課題は当初、現地調査によって得られる質的データに基づいて進めることを予定していた。ただし、2020年度は新型コロナウィルス拡大の影響により、現地調査そのものが実施できなかった。また現地のインターネット環境の問題やオンラインでの聞き取り調査ができる内容や範囲に制限がある。そのため、研究計画を変更し、文献調査を軸に据えて研究活動を実施した。ただし、当初の研究計画を変更したことで、オセアニアや日本の事例との比較研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は文献や資料の渉猟を中心として研究を進めた。2021年度は可能であれば現地調査を実施する。引き続き現地調査の実施が困難である場合には、文献調査に加えて、インターネットや電話でのインタビューなど双方向的な調査を実施する。具体的な実施方法については、インターネット環境や現地でのインフォーマントの状況についても配慮しながら実施することにする。また来年度には本研究課題の成果を投稿論文として発表する準備を進める。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、2020年度はインドネシアでの現地調査を実施する予定だった。しかし、新型コロナウィルス拡大の影響により現地調査を実施できなかったため、当初計画していた旅費を執行できなかった。2021年度に渡航が可能な場合には、現地調査のための旅費として使用する。ただし、渡航が不可能な場合には、引き続き文献調査や外国の公文書館からの資料請求の費用として使用する計画である。
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