2020 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア大陸部の上座部仏教僧伽における「民族宗派」の全体像把握に向けた研究
Project/Area Number |
19K20545
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
和田 理寛 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (70814325)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上座部仏教 / 民族と宗教 / 宗派 / 東南アジア大陸部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東南アジア大陸部の上座部仏教と民族の関係について、言語・文字の実践に注目しながら明らかにすることである。2020年度はコロナ禍により、予定していた海外での現地調査を一切行うことができず、大変厳しい状況となった。そうしたなか文献資料を基に、ミャンマー南東部のダウェー地域に関する研究を角田彩佑里氏との共著として研究雑誌『アジア・アフリカ地域研究』に2点投稿し、査読を経て掲載された。 1)ダウェーをめぐる民族論的研究(論文「ミャンマーの「ダウェー人」をめぐる民族分類と民族主義」) ダウェー地域の住民は、ゆらぐ民族認識をもつ・もたれている人々であり、固有の民族か、それとも地域色をもつビルマ人なのか判然としない。本論文は国勢調査の民族分類などを基に、植民地政府や独立後のミャンマー国家が、つねにダウェーを固有の民族として分類してきたこと、その一方で当事者たちの間にはダウェーという民族意識や民族主義がそれほど強固なものとして立ち現れてこなかったことを整理し、公的な民族分類が必ずしも当事者の民族主義を高めるわけではないことを論じた。 2)ダウェー僧伽に関する研究(研究ノート「ダウェー僧伽に関する覚え書」) 上記の民族論的研究を下地としつつ、本論稿はダウェー固有の僧伽について論じた。ミャンマー側ではダウェー地域を拠点とする宗派の創立について整理した。タイ側ではダウェー僧院を取り上げ、20世紀初頭、ビルマ僧やタイ僧とは儀礼(羯磨)をともに行おうとしないダウェー僧たちの動きがあったことに注目した。
仏教と民族の関係を問う本研究においては、ダウェーの人々が独自の僧伽や宗派を形成してきたことを提起できた点において意味があった。ただしそうした固有の僧伽ないし宗派の存在が、言語の固有性とどれほど関連しているかという点については、文献資料だけでは分からないことも多かった。これは今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響が大きかった。第一に、本研究にとって最も重要である海外での現地調査を行うことができなかった。第二に、オンライン講義などの新たな対応に追われ、予定より研究に十分な時間を割けなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の状況、および2月以降におけるミャンマーの政情不安により、今年度の海外調査は難しい可能性が高い。インターネット上の情報や動画等を資料として用いることができないか、引き続き検討する。また、コロナ・ウイルスの感染状況が落ち着き、国内移動ができるようになれば、在日の上座部仏教僧にインタビューを試みたい。
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Causes of Carryover |
理由)予定していた海外調査がコロナ禍により実施できなかったため。 翌年度ないし翌々年度、海外渡航が可能になれば、海外調査を実施する。
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