2022 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア大陸部の上座部仏教僧伽における「民族宗派」の全体像把握に向けた研究
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19K20545
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
和田 理寛 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (70814325)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 上座部仏教 / 東南アジア / タイ / ミャンマー / 少数民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、上座部仏教社会における固有の言語や文字を基礎とした「民族宗派」の実態を明らかにすることである。 コロナ禍の影響が落ち着き、2022年度は国内外での調査が徐々に再開して、タイ国チェンマイでの資料収集(北タイおよびシャン民族の文字と仏教の関係)や、日本国内におけるタイ寺院やミャンマーの少数民族モン(Mon)の寺院での聞き取り(誦経方法など)に着手することができた。また、資料を扱ううえで必要となる北タイ語および北タイ文字の初歩的な学習や、モン語テキストの読解についても、母語話者から指導を受けた。ただし、今回フィールドで集めた資料の整理はまだ途中である。さらに、調査によって今後収集すべき資料が多いことがわかり、今後は調査対象をしぼる必要性も出てきた。まずは特定の誦経実践に焦点をあて、民族ごとの誦経発声と内容の比較を行いたい。 また、本科研と他の科研(木谷公哉代表「東南アジア大陸部少数民族は言語文化アイデンティティをどのように維持発信しているか」)の両方にまたがる研究として、ミャンマーの少数民族モンの定期刊行物の整理を行った結果、モンの仏教僧が関与する雑誌では民族語であるモン語の使用割合が高いことが改めて明らかになった。これは、本科研が目的とする「民族宗派」の実態解明という点においても興味深い結果であった。同成果は近日刊行される報告書『東南アジア逐次刊行物の現在』第2編の一部として収録される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍によるこれまでの調査中断の影響が大きい。タイでは調査が再開できたものの、新たな調査対象についてはまだ初歩的な資料収集にとどまっている。ミャンマーでは政変によって調査が困難なままである。今後はインターネットを活用した調査にも力を入れたい。
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Strategy for Future Research Activity |
各民族における誦経発声方法の体系的な整理は、地域的な差異も大きく、想定より困難が大きい。よって対策として、1つ目に五戒受持に伴う祈願文などに焦点をしぼり、その発声と内容の違いを整理することで民族や地域の大まかな違いの把握を目指す。2つ目に少数民族は現在でも文字の使用や表記法において動態的であり、その動きを仏教という面と関連づけて調査を進めることで、民族と仏教の関係をめぐる議論への貢献を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍とミャンマー政変により2020年以降の調査が中断していた影響により、遅れが生じている。次年度は主に現地調査と、各言語による資料分析の指導を受けるために使用し、研究を進めたい。
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