2019 Fiscal Year Research-status Report
Migration System Study of Young People from Myanmar, Nepal, Sri Lanka, Vietnam to Japan
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19K20549
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
渋谷 淳一 東京福祉大学, 留学生教育センター, 特任講師 (30649900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移民 / 留学生 / 外国人労働者 / アジア移民 / 移民労働者 / 国際社会学 / 移民社会学 / 国際政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は3つの視点で調査を行った。1:ミャンマーとネパールにおいて若者が教育、労働市場においてどのような立場に置かれているか現地調査を行った。彼ら/彼女らの教育環境は年々改善されており、教育投資が高まっているが、大学以降の高等教育機関における専門家養成には多くの課題があった。労働においては新卒市場は改善されているものの、彼ら/彼女らの学歴に見合う雇用創出がなされておらず、かつ都市圏の生活に適応した収入を得えることは難しい状況が明らかになった。また、出身地・出身階層やコネクションの有無により機会が制限されるケースが多かった。これらは海外への留学・就労へ向かわせる要素となっている。 2:日本およびミャンマー、ネパールで、海外への留学・就労の決定経緯の調査を行った。大きく関わっていたのは1で検討した構造的な問題と、血縁・地縁などによる点が強かった。たとえば、親や親戚のすすめにより決定するケースが多い。また、送り出し機関の選択も同様であり、ほとんどが人伝の紹介で決めており、価格や評判などはあまり考慮されることはなかった。この一方で移民先への事前の知識・情報は乏しく、日本語学校に通っているケースでも日本について具体性のあるイメージを持っている者は限られた。 3:送り出し国と受け入れ国の関係について検討した。アルバイトに没入する留学生、単純作業に従事する技能実習生、悪質な送り出し機関の存在など、本来の在留資格から逸脱している現実は送り出し国でも強く認識されており、移民や送り出し機関へ政府の監視は強化される傾向にある。日本政府でも在留資格特定技能の新設をめぐる送り出し国との調整の中で、これらを問題としており、是正に向けた協力関係を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
12月までは概ね順調に進展した。本研究にはミャンマー、ネパール、スリランカ、ベトナムへの現地調査が不可欠であるが、ネパールではほぼ完了し、ミャンマーでの調査も進んだ。 ネパール関係の研究成果をまとめ「ネパールの若者移民 世界への移民、日本への留学」と題した報告を行った。ネパールで行われている移民動向(留学・就労)を整理した上で、日本への留学がどのように位置づけられるかを検討した。ネパールからの海外への移民は、すでに外国にいる親族を頼るケースを除けば、①日本への留学、②英語圏(主にオーストラリア)への留学、③東南アジア・中東への出稼ぎという形態が多い。出稼ぎに関しては学歴が不要で、留学に関しては高卒の学歴(高校卒業試験)が必要となる。日本とオーストラリアへの留学の違いは、制度的にはオーストラリア留学には高い卒業試験結果を求められることが違いである。しかし、実際の留学先を決定する過程ではすでに移民した親族や縁者がいるかどうかがカギとなっていた。留学動機は昨今指摘されることが多い出稼ぎが動機となるケースは少なく、自国での自己実現の場が限られていることから、進学・就職を目指しているケースが多い。以上のことから、ネパール留学生をめぐるアルバイトへの没入や学力不振は出身国での事情に起因するというよりも彼ら/彼女らと日本社会での様々なミスマッチの中で生じていると考えられる。 また本研究の成果を用いて「移民社会化する日本と共生の課題」という論文をまとめた。移民社会日本の状況を概観した上で、様々な文脈から本格的な移民政策が導入できなかったことが、移民受け入れを一貫して拡大しつつも、絶えず問題を生じさせてきた。留学・技能実習においては移民政策、特に非熟練労働の受け入れ政策が欠如していたことが問題を生じさせており、これは新在留資格特定技能においても解決し難い状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では2020年1月以降にベトナム、ミャンマー、スリランカでの留学経験者、送り出し機関などへの調査を計画していたが、コロナウイルス蔓延により現在計画が立てられない状況にある。引き続き現地調査の可能性を検討するとともに、日本にいる関係者へインタビューの拡充や、インターネットを経由したインタビューを行うことで研究の質を維持したい。 また、コロナウイルス拡大による留学生、技能実習生の雇用の悪化と生活困難、新規生の入国問題など個々人、制度ともに危機を迎えている問題についても関わっていきたい。 また、2019年に在留資格特定技能がはじまり、留学生・技能実習生が担っていた非熟練労働が代替されることが政府により企図されている。初年度の特定技能取得者は政府の想定より大幅に下回ったが、少数ではあるが留学・技能実習からこの在留資格への移行がはじまっている。本研究と非常に関わりの深い問題なのでこの在留資格の運用についても研究していくこととする。
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Causes of Carryover |
2020年1月以降に物品購入と長期海外調査を予定していたが、コロナウイルス感染症拡大により実施できなかった。2020年度に2019年度に計画していた物品購入と長期海外調査を行いたい。
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