2020 Fiscal Year Research-status Report
Migration System Study of Young People from Myanmar, Nepal, Sri Lanka, Vietnam to Japan
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19K20549
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
渋谷 淳一 法政大学, 大原社会問題研究所, 研究員 (30649900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移民 / 留学生 / 外国人労働者 / アジア移民 / 移民労働者 / 国際社会学 / 移民社会学 / 国際政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近年大幅な増加を見せるアジアからの若者移民について、受け入れ国日本を中心としたマクロ構造の変化により説明されることが多いが、移民する若者彼ら・彼女らの動機や現地社会の状況、日本とのネットワークなどを明らかにすることで、このアジアからの若者移民の潮流の意義を問い直すものである。 2020年度はコロナ禍の影響により、本研究の中心にある諸外国での現地インタビュー調査が行えず、大幅な計画変更を迫られた。すでに繋がりのある現地のアクターや日本で暮らす若者への調査を中心に行った。前年度までには見られなかった特徴としては以下がある。 現地の状況に関しては、日本への入国が制限されたことにより、送り出しに関わる主体は大きな打撃を受け、特にノウハウが蓄積されていない新規参入者はより厳しい立場に置かれている。また、これまで日本への主要なルートである留学、技能実習のそれぞれに送り出しに係る主体が別れていたが、コロナ禍を契機に両者および新規の在留資格である特定技能を兼ね多角化を図る主体も散見された。このようにコロナ禍による影響は越境的なネットワークを弱体化させるだけでなく、質的な変化を生じさせている側面もある。 日本にいる若者に関しては、特別定額給付金の対象とはなったが、その他の公的なセーフティネットからは除外されており脆弱な立場に置かれることになった。中でもコロナ禍により職を失った若者たちは窮地に陥ることとなり、友人など私的なネットワークに頼るか、一部の地域で行われているNGOや住民組織などの支援を受けた。また、これまで日本の労働市場が売手市場的であったことから、正社員・アルバイトともに再就職までのノウハウが乏しく、パイが少ない中で競争にも参加できない若者が多く見られた。 また、コロナ禍は各国の出入国政策にも大きな影響を与え、大きな差異が生まれた。これについても各国ごとに分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度に行う計画であった、ミャンマー、スリランカ、ベトナムでの現地調査が行えなかったことで、計画に著しい遅れが生じている。各国での調査とその比較・分析は本研究の根幹をなす部分であるので必要不可欠である。インターネット会議システムを通じた調査も試みたが、現地調査に比べ質的にも量的にも十分な成果を得るに至っていない。コロナ禍のいちはやい終息が待たれる状況である。 以上のような状況であるので、すでに得られた調査結果の総括や研究発表に注力した。5月に「近年のアジアから日本への若者移民とその課題 ―ネパールのケースから―」という報告を行い、これまでの日本の移民受け入れの歴史の中で、アジアからの若者移民を位置づけ、その特徴をまとめた。また、現地調査を踏まえ日本・ネパール間の移民ネットワークや若者の社会的な状況について分析した。 2月には「アジアから日本への若者移民――送り出し機関へのインタビューから検討する移民システムの現状」という報告を行い、ネパールやミャンマーの送り出し機関へのインタビューを踏まえ、どのようなネットワークを構築し、それに対してどのような主観的・客観的評価をしているかをまとめた。 また、昨年執筆した「移民社会化する日本と共生の課題」(羽場久美子編『移民・難民・マイノリティ』彩流社)であるが、コロナ禍がアジアの若者移民へ与えた影響を踏まえ内容を大幅に変更、再構成し2月に出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き現地調査の可能性を検討するとともに、日本にいる関係者へインタビューを継続して実施することとする。また、現地調査を代替する手段(インターネット会議システムなど)について試行錯誤を行うこととする。 また、コロナ禍により大幅な改変をせまられた日本及び関係各国の入国管理制度の変化や、それぞれの移民の位置づけの変化についての分析にも注力したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外現地調査や対面インタビューが困難であったことと、それに伴い研究計画に大幅な遅れが生じていることから次年度使用額が生じてしまった。2021年度にこれまで計画していた物品購入と長期海外調査を行いたい。
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