2022 Fiscal Year Research-status Report
Migration System Study of Young People from Myanmar, Nepal, Sri Lanka, Vietnam to Japan
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19K20549
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
渋谷 淳一 法政大学, 大原社会問題研究所, 研究員 (30649900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移民 / 留学生 / 外国人労働者 / アジア移民 / 国際社会学 / 移民社会学 / 国際政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近年大幅な増加を見せるアジアからの若者移民について、受け入れ国日本を中心としたマクロ構造の変化により説明されることが多いが、移民する若者彼ら/彼女らの動機や現地社会の状況、日本とのネットワークなどを明らかにすることで、このアジアからの若者移民の潮流の意義を問い直すものである。 2022年度はコロナ禍が終焉し、年度後半は本研究の中心にある諸外国での現地インタビュー調査が行えるようになった。よって、未着手であったベトナムでの調査を行った。しかしながら、スリランカ、ミャンマーへの調査は準備が整わず行うことができなかった。また、日本においても留学生や留学生に関わる大学教員、日本語学校教員、企業の人事担当経験者に話を伺うことができた。 以上を踏まえて、2022年度の研究成果をまとめると、ひとつは、研究スタート時点に比べ、ベトナムにおいて大きな変化が生じていることである。これまでベトナム人の増加率は技能実習、留学ともに非常に高く、近年のアジアからの若者移民の代表的なケースであった。しかしながら、現在は両者ともに希望者は減少に転じている。この背景として、以前より大学新卒者の就職状況が改善されたことや、2022年の極端な円安などマクロ構造レベルの変化が注目されるが、日本での労働に関する情報が浸透したことによる人気職・不人気職ができたことや、特定技能の新設による送り出し機関の戦略変化などミクロ・メゾ構造の変化も生じていた。 もうひとつは、留学経験者へのインタビューを通じて、彼ら/彼女らはいわゆる出稼ぎを目的とした移民ではなく、自国の大学を卒業しても望む就職は難しいという判断がその根本にあったことがより明確となったことだ。出稼ぎを目的とした留学生というレッテルは語弊があり、出国前、入国後の諸条件により、生活の中心が出稼ぎとなっていったというべき実態が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度に入り、海外調査が可能となり、8月にベトナムでの調査を行った。この研究成果の一部を用い2023年2月に「アジアから日本への若者移民――元ベトナム人留学生の留学前の状況と留学後の状況」と題した研究報告を行った。 この報告では、彼ら/彼女らがどのような経緯で留学を決定し、留学を終えた後に留学をどのように評価しているかを中心に論じた。すでに終えたネパールでの調査成果と比較すると、留学の経緯については自国社会・経済状況による大学新卒者の就職困難があったが、留学後については日本関係の仕事に限られていたネパールのケースと異なり、自国で各人の能力に合わせた企業に就職し、加えて同世代よりもよい待遇で雇用されているケースが多かった。 しかしながら、先述したようにミャンマーとスリランカでの調査は行えず、また本研究分野における両国の先行研究が乏しいことから、本研究の根幹部に当たる各国間での比較・分析が未着手であり、進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ネパールのケース、ベトナムのケースを元に論文を執筆中である。 今後は2023年の夏および冬に、スリランカとミャンマーの調査を計画している。その成果を踏まえ、年度末までに4カ国の比較・分析を行い、報告および報告書の作成したい。 また、これまでのインタビューが留学経験者や送り出し機関関係者が多く、技能実習経験者が少ないので、後者について国内外で積極的にインタビューを行いたい。 さらに、本研究をスタートした時点に比べ、アジアからの若者移民についての日本側の制度運用や制度改正の動きが急速に進んでおり、それに伴い、若者移民の増減、送り出し機関の戦略変化が生じてきている。この点についても留意し研究を行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外での調査が行えなかったため、それに伴い旅費や謝金等を支出することができなかった。早期に海外調査を行い、遅れている研究計画を前進させたい。
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