2020 Fiscal Year Research-status Report
アフリカにおける多民族社会成立の解明―地方行政における伝統的権威の裁量に着目して
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19K20552
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原 将也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00823147)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ザンビア / 間接統治 / 伝統的権威 / 権力 / 移住 / 多民族 / 統治構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植民地時代から現在までのザンビア北西部において伝統的権威に着目し、多民族社会が成立する要因を解明し、共生社会を実現する社会の統治構造を探ることを目的としている。 2020年度には新型コロナウイルス感染症の世界的なひろがりの影響によって、ザンビアにおいて現地調査を実施することを断念した。しかしながら、2019年度にイギリス、これまでにザンビアで収集した北ローデシアの植民地統治と伝統的権威の役割に関する行政文書の分析を進め、間接統治のもとで伝統的権威の権力が強くなった過程について考察した。また北ローデシアにおける地方行政に関する書籍や北ローデシア、ザンビアの歴史に関する文献を収集し、植民地時代以降に伝統的権威が果たしてきた役割の実態について検討した。現在のザンビア政府が発行する行政文書を収集・分析し、植民地時代と現在の伝統的権威の役割や地位について比較した。現在のザンビアにおける伝統的権威の地位は、憲法で定められており、伝統的権威は地方における行政や司法に公式に携わっている。こうした地方行政における伝統的権威の役割は、植民地時代に植民地政府によって確立されたものであることがわかった。 2019年度の調査結果と文献資料等の分析成果をまとめ、ザンビア北西部州カオンデの領域において植民地時代以降に多民族地域が形成された要因について考察し、11月にオンラインで開催された2020年日本地理学会秋季学術大会で発表した。本研究も含めたこれまでの研究成果から、2020年8月にザンビアに関して解説する論文を発表した。ザンビアについて網羅的に取り上げた書籍において、複数の章の執筆を担当し、それが2020年8月に刊行された。2019年度に実施した移住と他民族の受け入れに関する調査成果をまとめ、英文書籍の分担執筆として発表し、2021年3月に刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により現地調査を実施できなかったが、これまで収集した史料や文献の分析を進めた。2019年度に北ローデシアにおける地方行政と伝統的権威に関する多数の文献と史料を収集することができたこともあり、当初の予定では研究期間の後半にそれらを分析する予定であったが、前倒しすることで柔軟に対応することができた。2020年度には現地調査で聞き取ることの難しい植民地時代の統治構造の実態を把握することができ、論文や書籍、学会発表というさまざまなかたちで、研究成果を発表した。当初の計画を修正したこともあり、2020年度には順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年8月に開催される予定であった34th International Geographical Congress in Istanbulが延期され、オンライン形式で2021年8月に開催されることになり、移住と伝統的権威に関して発表する。これまでの調査成果をまとめ、植民地時代における伝統的権威の権力と多民族地域の形成に関する論文を執筆する。2021年度もひきつづき、学会発表や論文などの形で研究成果の発表に努めていく。新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、2021年秋ごろまでの渡航については、断念せざるを得ないと考えている。可能となれば、2022年2月もしくは3月にザンビアに渡航し、現地調査を実施する予定にしている。日本のみならずザンビア、サブサハラアフリカにおける新型コロナウイルス感染症の状況を注視しながら検討し、柔軟に研究計画を変更する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的なひろがりによって、ザンビアで実施する予定にしていた現地調査を断念した。また2020年8月には、トルコ・イスタンブールの第34回国際地理学会議で発表する予定であったが、こちらも1年延期となった。そのため本研究計画で多くの部分を占める旅費を使用しておらず、次年度の使用額が生じた。2021年度には新型コロナウイルス感染症の状況を注視しながら、ザンビアへ渡航して調査を遂行したい。ザンビアへの渡航が難しい場合には、植民地時代の文献収集や学会参加、論文発表などに使用する予定である。
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Research Products
(13 results)