2023 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおける多民族社会成立の解明―地方行政における伝統的権威の裁量に着目して
Project/Area Number |
19K20552
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原 将也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00823147)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ザンビア / 北ローデシア / 伝統的権威 / チーフ / 地方行政 / 社会規範 / イギリス南アフリカ会社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では植民地期以降のザンビアを対象とし、多民族社会が成立する要因について地方行政を担ってきた伝統的権威の役割から解明し、共生社会を実現する統治構造を探求することを目的としている。 ザンビア北西部では、2023年になってから新たにトンガという民族の移入者を受け入れていた。彼らは多くの家畜を引き連れ、地域の中心部から離れた未利用の林をチーフから分配されていた。外部者が土地の分配を受ける際に、チーフに対して家畜や金銭を贈与することがあった。これまでの研究より、大部分の地域住民はチーフに対して高い評価をもつことがわかっていたが、今回の事例では、ごく一部の住民は、チーフによる土地分配とお礼のようにその権力を利用して利益を得るふるまいを知り、快く思っていないことが明らかになった。チーフが地域を統治するうえで、その権力の行使について、住民の目が不正の抑止力になりうることが判明した。イギリス・ロンドンの国立公文書館において、イギリス南アフリカ会社(BSAC)期の行政文書を収集した。北ローデシア北西部の境界は1909年まであいまいであり、本研究の対象地域は、それまでBSACの統治下になく、各チーフ個人による統治が長くつづいてきた。 ザンビアでは植民地期に、植民地支配者の負担を軽減する目的でチーフの権力が強化された。本研究が対象としたカオンデ社会では、チーフが地域の実情を把握したうえで裁量を発揮していたことが明らかになった。しかし、チーフが権力の濫用者となることもあり、チーフと住民の日常的な関係性や社会の規範、チーフ個人の人柄や経験といった明文化されていない地域的文脈を考慮し、地域の統治について検討することが重要である。本研究の成果の集大成として、植民地期以降現在までのザンビア北西部の地方行政におけるチーフの役割について検討した論考を発表した。
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