2019 Fiscal Year Research-status Report
French "communautarisme": a comparative study on policies related to Muslims and Jews
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19K20553
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
大嶋 えり子 金城学院大学, 国際情報学部, 講師 (90756066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 共同体主義 / フランス政治 / 移民 / 移民政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスでよく耳にする「共同体主義」の概念に関する先行研究を批判的に検討し、この概念がどのように政治の場で使用されてきたのかを報道や政府の資料を基に調査した。一般的に、外国に出自を持つ人々がフランスの一般的な生活様式などから離れて、自分たちの文化に則った生活様式を実践していることを批判的に論じる際にこの語がフランスのメディアや政治家たちによって用いられる。 研究の結果、この概念が多くの場合、客観的に社会的事象を指し示すかのように使用されてきたが、実際には政治的コノテーションが強く、フランス共和国が掲げる原則(「自由、平等、博愛」、「ライシテ」)などに反することを批判する目的で使用されていることが明らかになった。 こうした批判的言説分析は、ただ一つの語の使用を問題視するにとどまらず、こうした語の使用自体が政策に直接的に影響しており、さらに、社会における分断を指し示すのではなく、むしろ助長しているといえる実態に光を当てることに貢献するといえる。 また、ある語の使用をめぐりフランスの移民政策を批判的に検討する研究は、言葉の使用が政策決定、ひいては政策の正当化における重要性を示す結果につながり、フランスの問題だけではなく、日本やそのほかの地域の政策を批判的に検討する際の手がかりを提供すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の検討・整理、概念の概観、具体的な使用例などをおおむね調査でき、論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
検討する資料を増やす、とりわけメディアにおける共同体主義概念の使用の検討を行うために、フランス渡航を考えていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今後いつ渡航が実現するかわからない。 渡航ができない状況が続いた場合が想定し、できる限りインターネットで収集(購入)できる資料を探し、それらを基にフランスの移民統合政策における共同体主義概念の位置づけや効用を考えていく。具体的には新聞記事やラジオ番組、映像資料を収集しようと考えている。 さらに、マクロンが「共同体主義ではなく分離主義だ」という趣旨の演説を行ったことを受け、「共同体主義」のみならず「分離主義」、さらにはそれらの対となる「共生」について研究を発展させていく必要があると考える。「分離主義」や「共生」は当初の研究計画では検討する対象ではなかったが、19年度の研究成果および最新の動向により研究対象として加える必要があると判断した。 以上を踏まえ、ムスリムとユダヤ人への政策の違いや主要政治家の再度の違いに注目していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により学会が延期になり、次年度使用額が生じた。
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